KNOWLEDGE & TOPICS

ナレッジ&トピックス 会計情報トピックス

【コロナ関連】会社法決算、株主総会報告の延期対応について

~基準日変更・継続会の開催について~

プライムジャパン・コンサルティング
会計情報リサーチ

印刷する


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大、および緊急事態宣言が発令されたことに伴い,今後3月決算企業をはじめ多くの企業において決算および監査業務を例年どおりに進めることが困難になることが想定されています。

 

 

こうした事態を受け、企業や監査法人が決算および監査業務に十分な時間を確保できるよう,金融庁は、4月14日、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について」を公表し、有価証券報告書等の提出期限について9月末まで一律に延長する措置を講じています。

 

 

また、4月15日には、声明文「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」が公表され、通常6月末に開催される株主総会の運営に関しても、決算および監査業務に大きな遅延が生じる可能性も想定した対応が求められています。

 

 

これらに関連して、会社法の計算書類等の定時株主総会報告を延期する方法としては、以下の2つが考えられます。

 

  1. 定時株主総会の基準日を変更し、延期後の定時株主総会において報告する方法
  2. 当初予定した時期に定時株主総会を開催して、会社法第317条※に基づいた「続行」の決議を求めた上で、計算書類等については継続会において報告する方法

 

※ 会社法第317条(延期又は続行の決議):「株主総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第298条(株主総会の招集の決定)及び第299条(株主総会の招集の通知)の規定は、適用しない。」

 

 

1.基準日変更による定時株主総会の延期

 

3月期決算企業の多くは基準日を3月31日に設定しているため,基準日から3ヶ月以内の6月末までに定時株主総会を開催していることが一般的ですが、基準日によっては、事業年度末後3ヶ月以内に必ずしも定時株主総会を招集しなければならないわけではありません。すなわち、基準日株主による議決権行使は、基準日から3ヶ月以内に行使するものに限られているので、逆に言えば、会社法上は、議決権行使の基準日に応じて3ヶ月以内に定時株主総会を開催すればよいことになります(会社法第124条第1項・第2項、第296条第1項)。

 

したがって、COVID-19の影響に伴い,6月末までに定時株主総会を開催できない場合には,例えば、基準日を5月に変更することにより、定時株主総会日を7月以降に延期することが手続上は可能となります。なお、定款で定められた議決権行使の基準日を変更する場合,新たな基準日を定め,当該基準日の2週間前までに基準日株主の権利内容等を公告する必要があります(会社法124条第3項)。

 

すでに東芝は、4月18日,2020年3月期決算発表の延期および議決権基準日を5月15日に変更し,定時株主総会は7月以降に開催予定である旨を公表しています。

 

2020年度3月期(2019年度)通期連結決算発表の延期及び第181期定時株主総会の議決権の基準日設定に関するお知らせ

 

そのほか、オリンパスは、4月30日、議決権基準日を5月31日に変更し,定時株主総会は7月下旬以降に開催予定である旨を公表しています。

 

第152期定時株主総会の日程延期ならびに議決権および配当受領権の基準日設定に関するお知らせ

 

日本板硝子も、同じく4月30日に、議決権基準日を6月4日に変更し,定時株主総会は7月以降に開催予定である旨を公表しています。

 

2020 年3 月期決算発表の延期、第154 期定時株主総会の議決権の基準日設定および新型コロナウイルス感染拡大による影響に関するお知らせ

 

2.継続会開催による対応

 

継続会を開催する場合は、定時株主総会を当初予定した日程で開催し,会社法第317条に基づく続行の決議を求めることになります。定時株主総会では、取締役選任等の決議をするとともに,計算書類等の報告については,継続会の場で説明を行うことになります。継続会では,総会の後合理的な期間内に開催し,計算書類や監査報告等について十分な説明を行うことになります。

 

なお、継続会については、一部の不正会計の事例等では見られるものの、これまで開催された実例が必ずしも多くないことから、今般、金融庁・法務省・経済産業省の連名で「継続会(会社法317条)について」と題する指針が公表されています。

 

3.株主総会運営について

 

COVID-19の影響拡大に関連し,当初予定した時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合における定時株主総会の運営については、法務省より見解が公表されています。

 

法務省:定時株主総会の開催について

 

また、あわせて経済産業省からも、株主総会の運営上想定される事項についての考え方をまとめたQ&Aが公表されています。

 

経済産業省:株主総会運営に係るQ&A

 

以上

 

関連サービスに関するお問合せ >

株式会社プライムジャパン・コンサルティング

代表取締役社長 菊川 真