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解説シリーズ:「収益認識に関する会計基準」第2回

~ステップ1:顧客との契約の識別~

プライムジャパン・コンサルティング
会計情報リサーチ

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会計情報リサーチ

2020年8月21日

 

わが国における収益認識に関する初の包括的な会計基準である「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)が2021年4月から適用開始予定となっています。この新しい会計基準の適用に伴い、企業の収益計上に関する考え方が大きく変わろうとしています。新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、いま現在、企業を取り巻く収益環境は激変していますが、当該会計基準は経理財務部門だけでなく、営業部門や製造部門、IT部門等の企業内部の幅広い領域に大きな影響を及ぼす可能性があります。そこで本シリーズでは、「収益認識に関する会計基準」(以下、「会計基準」という)について、事例等も交えながらわかりやすく解説していきたいと思います。

 

第2回は、収益の認識基準に係るステップ1「顧客との契約を識別する」について解説します。

 

 

1.概要

 

第1回で触れましたように、収益認識に関する会計基準の特徴は、収益を「いつ」、「いくら」で認識するかを決定するため、5つのステップを適用して収益を認識することを基本原則としています(会計基準第17項)。

 

このうち、ステップ1は、契約を識別すること、すなわち、「顧客との契約」の定義に該当する取引をピックアップすることからスタートします。その際、個々の契約1つ1つに本会計基準を適用することを原則としています。ただし、一定の要件を満たした場合には、複数の契約を結合して適用することも認められています。

【5つのステップ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.契約の識別

 

本会計基準では、「契約」の定義を明文化した上で、契約を識別するにあたって満たすべき5つの要件を定めています。本会計基準を適用するにあたっては、以下の定義と要件を満たす「契約」を漏れなく拾い上げることが必要となります。

 

 

【契約の定義(会計基準第20項)】

 

 

【契約を識別するための5要件(会計基準第19項)】

 

3.契約の結合

 

本会計基準は、1つ1つの契約単位で独立に適用することを原則としますが、次の条件1~3を全て満たす場合には、当該複数の契約を結合し、単一の契約とみなして処理します(会計基準第27項)。

 

 

【条件3②のイメージ】

 

なお例外として、次の2つの条件を満たす場合には、複数の契約を結合せず、個々の契約に基づいて処理することができます(会計基準第101項)。

 

 

 

 

【他社事例】

KDDI株式会社 2020年3月期の有価証券報告書(IFRS)

重要な会計方針の抜粋

 

 

パナソニック株式会社 2020年3月期の有価証券報告書(IFRS)

収益の注記の抜粋

 

4.契約の変更

 

顧客との契約では、一度締結した後に、その内容が変更される場合があります。本会計基準では、そのような場合の考え方と会計処理について定めていますが、その内容に応じて会計処理方法が変わってきますので注意が必要です。

 

 

定義

 

契約の範囲と価格に焦点をあてて、「契約の変更」を次のように定めています(会計基準第28項)。

 

 
「契約の変更」の取扱いフロー

 

本会計基準では、「契約の変更」を上記のような定めた上で、当該契約の範囲と価格の変更の有無およびその内容に応じて、新たな独立した契約とみなすのか、または既存の契約の一部変更とみなすのかを定めています。

 

 

【A.独立した新たな契約の処理のイメージ】

 

 

以上

 

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