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国際会計基準審議会(IASB)は、2017年10月12日、IAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」に関する狭い範囲の修正「関連会社及び共同支配企業に対する長期持分」(以下、「本修正」という)を公表しました。
本修正では、関連会社または共同支配企業(以下、「関連会社等」という)に対する長期持分に係るIAS第28号の規定を一部見直し、当該長期持分はIFRS第9号「金融商品」(減損の取扱いを含む)の適用範囲に含まれることを明確化しています。
関連会社等に対する持分については、IAS第28号において、持分法が適用される投資(普通株式)に係る持分だけでなく、関連会社等に対する純投資の一部を実質的に構成するが持分法の適用を受けない長期貸付金や優先株式等(以下、「長期持分」という)も含まれるものとされています(IAS第28号第38項)※1。
※1 IAS第28号第38項では、決済が計画されておらず、また予見できる将来に決済される可能性も低いものは、実質的に当該関連会社等に対する投資の延長線上にあるとしている。
これを踏まえ、IAS第28号では、持分法適用上、関連会社等の損失に対する企業の持分が、普通株式に対する投資額を超えて認識された場合には、当該超過損失額を長期持分へ配分することを求めています。さらにIAS第28号第42項では、持分法適用後の純投資に減損が生じていないかどうかを確かめるため、「純投資全体の帳簿価額」を単一の資産としてIAS第36号「資産の減損」に従った減損テストを行うこととされています。
しかしながら、IAS第28号では「純投資全体の帳簿価額」の内容を定義しておらず、帳簿価額に長期持分を含めて減損テストを実施するのか否かが明確ではないとされていました。また、IAS第28号により会計処理される関連会社等に対する持分は、IFRS第9号の適用対象外とされていますが(IFRS第9号2.1項(a))、長期持分については、IFRS第9号(減損の規定を含む)の適用が除外されるのか否かが明確でなく、実務上の取扱いにばらつきがみられることも指摘されていました※2。
※2 IFRS第9号の減損規定では予想信用損失モデルが採用されていることから、従来の発生損失モデル(IAS第36号)との違いによる影響が懸念されていた。
このように関連会社等に対する長期持分に関しては、IAS第28号とIFRS第9号のどちらが適用されるのか、あるいは両基準が適用されるのかについて、実務上の混乱が生じていたことから、IASBは、IFRS年次改善として検討を進め、2017年1月12日、公開草案「IFRS年次改善」(2015年‐2017年サイクル)として公表していました。本修正は、当該公開草案に対するコメントおよび再審議を経て、今般、単独の改訂として最終化したものであり、関連会社等に対する長期持分の測定(減損を含む)に関する、IAS第28号とIFRS第9号の適用関係について明確化を図ったものです。
審議の過程では、IFRS第9号2.1項(a)において適用除外となるのは、持分法に従って会計処理される関連会社等に対する持分のみであり、金融商品である長期持分は、持分法損失の配分および関連会社等に対する純投資の減損の場合にのみ持分法に従った会計処理が要求されることが確認されました。
この結果を踏まえ、本修正では、関連会社等に対する長期持分、すなわち関連会社等に対する純投資の一部を実質的に構成するが持分法の適用を受けない長期持分は、IFRS第9号の適用範囲に含まれ、減損に関する規定を含めてIFRS第9号に従って会計処理することが明確化されました。
また、当該長期持分に対するIFRS第9号の適用は、IAS第28号第38項(持分法損失の配分)および第40項~43項(減損損失の認識)の適用に先立って行い、さらにIFRS第9号を適用する際には、IAS第28号を適用することによって生じた長期持分の帳簿価額への調整(損失の配分および減損損失の認識)は考慮しないことも明確化されました。
なお、本修正と併せて、IFRS第9号およびIAS第28号の具体的な適用方法を示した設例が公表されています。
本修正は、2019年1月1日以後開始する事業年度より遡及適用されます。ただし、下記の移行措置(IAS第28号45G-45J項)が認められています。早期適用は認められます。
本修正を、IFRS第9号と同時に適用する場合には、IFRS第9号の移行措置が本修正にも適用されます(IAS第28号45G項)。
IFRS第9号の適用開始後に本修正を適用する場合には、IFRS第9号における移行措置の中の「IFRS第9号の適用開始日」を「本修正の適用開始日」に読み替えて適用します(IAS第28号45H項)。
IFRS第4号「保険契約」に従ってIFRS第9号の一時的な免除規定を適用する場合には、修正再表示は要求されません。ただし、必要な情報が事後的判断なしに入手可能な場合には修正再表示することができます(IAS第28号45I項)。
なお、修正再表示を行わない場合、長期持分の従前の帳簿価額と本修正適用時の帳簿価額との差額は、本修正適用開始時の利益剰余金(あるいは適切な場合には資本の他の内訳項目)として認識します。
以上
関連リンク:
・IASB、公開草案「IFRSの年次改善」(2015年‐2017年サイクル)を公表
外部リンク:
・IASB issues narrow-scope amendments to IFRS 9 and IAS 28
・ASBJ IASBがIFRS第9号及びIAS第28号の狭い範囲の修正を公表