KNOWLEDGE & TOPICS ナレッジ&トピックス
ナレッジ&トピックス
金融庁は、2023 年1月31日、有価証券報告書および有価証券届出書(以下、「有価証券報告書等」という)の記載事項について、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(以下、「本改正」と いう)を公表しました。本改正では、主に以下の内容の改正が行われています。
1.サステナビリティに関する企業の取組みの開示
2.コーポレートガバナンスに関する開示
関連して、同日付けでサステナビリティ情報等の参考となる開示例を掲載した「記述情報の開示の好事例集2022」 が公表されています。 また、本改正とは別に、EDINETが稼働しなくなった際の臨時的な措置として代替方法による開示書類の提出を 認めるため、「開示用電子情報処理組織による手続の特例等に関する内閣府令」も改正されています。
金融庁は、2022年6月13日、「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告-中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて-」(以下、「DWG報告」という)を公表しており、DWG報告において、「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」、「コーポレートガバナンスに関する開示」などに関して、制度整備を行うべきとの提言がなされていました。本改正は、当該提言を踏まえ、有価証券報告書等の記載内容を改正するものです。
本改正は、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下、「開示府令」という)、「企業内容等の開示に関する留意事項について」(以下、「開示ガイドライン」という)および「記述情報の開示に関する原則」の改正を行っています。具体的な構成は、以下のとおりです。
1.サステナビリティに関する企業の取組みの開示
2.コーポレートガバナンスに関する開示 (開示府令の改正)
2020年10月、我が国では、2050年のカーボンニュートラルを目指すことが政府として宣言されており、サステナビリティに関する取組みが企業経営の中心的な課題として注目されています。また投資家の関心も世界的に高まっており、関連してサステナビリティ開示の基準設定の動きも進んでいます。
2021年11月、国際会計基準財団(以下、「IFRS財団」という)は、国際サステナビリティ基準審議会(以下、「ISSB」という)の設立を公表し、2022年3月にISSBは、サステナビリティ開示基準の公開草案(サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項及び気候関連開示)を公表しています。
我が国においては、2022年7月、サステナビリティ基準委員会(以下、「SSBJ」という)が設置され、国内のサステナビリティ開示基準の開発および国際的な意見発信の担い手としての役割を担っています。
このような国内外の状況を踏まえ、我が国においてもサステナビリティ開示に向けた検討を進めることが急務となっていることを背景として、本改正に至っています。主な改正内容は以下のとおりです。
2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの再改訂により、人的資本、多様性に関する開示については、経営戦略に関連する人的資本への投資や、多様性の確保に向けた方針とその実施状況の開示が盛り込まれるなどの取り組みが行われています。
また、国際的には、米国では証券取引委員会(SEC)が2020年11月、年次報告書において人的資本に関する開示の義務付けを行い、国際標準化機構(ISO)は、2019年1月、人的資本の状況を示す指標を公表するなど、開示の議論が進んでいます。
こうした状況を踏まえ、本改正では、投資家の投資判断に必要な情報を提供する観点から、我が国における開示の対応として以下の改正が行われています。
サステナビリティ情報の「記載欄」の「戦略」と「指標及び目標」において、次の記載を求める
2022年3月、ISSBは、気候関連開示基準の公開草案を公表し、また米国では、2022年3月、SECが気候関連開示を義務化する内容の規則案を公表、最終化に向けて協議中となっています。その他、欧州でも、2022年12月、欧州委員会が公表したサステナビリティ開示の対象企業拡大や詳細開示要件を定める企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が最終化されています。
このような状況を踏まえ、サステナビリティ情報の開示における考え方および望ましい開示に向けた取組みをまとめた記述情報の開示に関する原則が改正されています。
コーポレートガバナンスに関する開示については、近年、ガバナンス向上に向けた枠組みの整備の一環として、スチュワードシップ・コードの再改訂やコーポレートガバナンス・コードの再改訂など着実な進展が見られ、加えて2022年4月からは、東京証券取引所における上場株式の市場区分が再編され、市場区分に応じたコーポレートガバナンス・コードの適用が行われるなど、着実な進展が見られます。
このような状況の中、企業内容の開示においても、コーポレートガバナンスに関する取組みの進展を適切に反映することが求められるとして、今般、以下の改正が行われています。なお、DWG報告では「重要な契約」の開示の拡充についても提言が行われていましたが、引き続き具体的な検討が必要であるとして、本改正には織り込まれず、別途改正を行うこととされています。
本改正は、公布の日から施行されます。
改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の規定は、2023年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用されます。
また、施行日以後に提出される有価証券報告書等から早期適用することも可能とされています。
以上