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【設例解説】設例6.連結子会社同士の合併の会計処理~合併の対価が子会社株式のみの場合


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設例6.連結子会社同士の合併の会計処理~合併の対価が子会社株式のみの場合

親会社P社は80%子会社X社を消滅会社とし、60%子会社Y社を存続会社とする吸収合併を行った。
この合併に際して、消滅会社X社の株主(P社およびX社株主)はY社株式20株を受け取った。
この結果、合併後のY社に対する持分比率は、P社が64%、P社以外の旧X社株主が4%、P社以外の旧Y社株主が32%となった。


吸収合併前図


【前提条件】

資料


<合併直前のX社およびY社の個別貸借対照表>

A社貸借対照表B社貸借対照表


上記前提条件の場合における
(1)株主P社の個別財務諸表上の会計処理
(2)存続会社Y社の個別財務諸表上の処理
(3)株主P社の連結財務諸表上の処理



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設例6の解説

親会社の持分比率が異なる連結子会社同士の合併で、合併の対価が子会社株式である場合は、存続する連結子会社に対する持分比率が変動する点がポイントとなる。

(1)株主P社の個別財務諸表上の会計処理

P社が受け取ったY社株式の取得原価は、引き替えとなったX社の株式の合併期日直前の適正な帳簿価額に基づいて計上する。


【仕訳】

借方
貸方
Y社株式(子会社株式)
320  
X社株式(子会社株式)
320  

(2)存続会社Y社の個別財務諸表上の処理

① 資産及び負債の会計処理
存続会社Y社が消滅会社X社から受け入れる資産および負債は、合併期日前日に付された適正な帳簿価額に基づいて計上する。


② 増加資本の会計処理
原則として、消滅会社の合併期日前日の適正な帳簿価額による株主資本の額を、払込資本(資本金または資本剰余金)として処理する。

【仕訳】

借方
貸方
諸資産
500  
払込資本
500  

(3)株主P社の連結財務諸表上の処理

X社は合併により消滅しているため、連結上の開始仕訳の振り戻しを行い、持分比率変動によりP社にとって追加取得となる仕訳を計上する。


【仕訳】


① 子会社株式(X社株式)に関する開始仕訳

借方
貸方
資本金
400  
X社株式(子会社株式)
320  
 
 
少数株主持分
80  
利益剰余金
20  
少数株主持分
20  

取得後剰余金100×少数株主持分20%=20


② 子会社株式(X社株式)に関する開始仕訳の振り戻し(合併による消滅のため)

借方
貸方
X社株式(子会社株式)
320  
資本金
400  
少数株主持分
80  
 
 
少数株主持分
20  
利益剰余金
20  

③ 子会社株式(Y社株式)の追加取得によるのれんの算定
P社のY社持分は60%から64%に増加しており、外部少数株主から追加取得した4%の持分は時価で計上し、少数株主持分との差異をのれんに計上する。

借方
貸方
少数株主持分(※2)
120  
Y社株式(子会社株式)(※1)
160  
のれん(※3)
40  
 (※3)
 

(※1)Y社の時価4,000×4%=160
(※2)Y社純資産の適正な帳簿価額3,000×4%=120
(※3) Y社株式の追加取得分に係る取得原価160と少数株主持分120との差額40がのれんとなる


④ 持分変動差額の認識
持分変動差額は、X社に対するP社持分とY社に対するP社持分の交換から生じる連結上のP社持分の純増額と、追加取得において計上したのれんの額を合わせたものであり、原則、損益として処理する(事業分離等会計基準90項)。

借方
貸方
払込資本
500  
Y社株式(子会社株式)(※1)
160  
 
 
少数株主持分(※2)
180  
 
 
利益剰余金(※3)
80  
 
 
持分変動差額
80  

(※1)Y社株式の取得原価320-新規追加取得160=160
(※2)X社の諸資産の帳簿価額500×持分変動後の少数株主持分比率36%=被結合企業X社の少数株主持分180
(※3)X社を連結することにより生じた取得後剰余金100×X社の当初持分80%=80