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ASBJ、「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」を公表

プライムジャパン・コンサルティング
会計情報リサーチ

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企業会計基準委員会(ASBJ)は、2019年10月30日、企業会計基準公開草案第68号「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」(以下、「本公開草案」という)を公表しました。本公開草案では、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを提案しています。

コメント募集期限:2020年1月10日


1.公表の経緯

国際会計基準(IAS)第1 号「財務諸表の表示」(以下、「IAS 第1 号」という)では、「見積りの不確実性の発生要因」(第125項)についての開示が求められています。この点、財務諸表利用者にとって有用性が高い情報として、日本基準においても開示を求めることを検討するよう要望が寄せられていました。こうした要望を踏まえ、ASBJでは、見積りの不確実性の発生要因に係る注記情報の充実についての審議を開始し、今般、その結果を本公開草案として公表しました。


2.本公開草案の概要


(1)開発にあたっての基本的な方針

ASBJでは、本公開草案の開発にあたっての基本的な方針として、個々の注記を拡充するのではなく、原則(開示目的)を示したうえで、具体的な開示内容は開示目的に照らして企業が判断するという新たな考え方を取り入れています。また、本公開草案の開発にあたっては、IAS 第1 号第125 項の定めを参考とすることとしました。


(2)開示目的

会計上の見積りは、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて合理的な金額を算出するものですが、財務諸表に計上する金額に係る見積りの方法や見積りの基礎となる情報が財務諸表作成時にどの程度入手可能であるかは様々であり、その結果、財務諸表に計上する金額の不確実性の程度も様々となります。したがって、本公開草案では、財務諸表に計上した金額のみでは、当該金額が含まれる項目が翌年度の財務諸表に影響を及ぼす可能性があるのかを、財務諸表利用者が理解することは困難であるとしています。
そこで本公開草案では、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを目的としています。


(3)開示する項目の識別

本公開草案では、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目を識別することを提案しています。項目の識別にあたっては、翌年度の財務諸表に及ぼす影響の金額的な大きさとその発生可能性を総合的に勘案して企業が判断することが考えられるとしていますが、影響の金額的な大きさの判断や、どの程度の影響が見込まれる場合に重要性があるとするのかなど、判断のための詳細な規準は示さないこととしています。また、識別する項目は、通常、当年度の財務諸表に計上した資産および負債であるとしています。


(4)注記内容

本公開草案では、識別した項目について、会計上の見積りの内容を表す項目名を独立の注記とすることを提案しています(識別した項目が複数ある場合には、それらの項目名はまとめて記載)。また基づき識別した項目のそれぞれについて、会計上の見積りの内容を表す項目名とともに次の事項を注記することを提案しています。

① 当年度の財務諸表に計上した金額
② 会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
上記①および②の事項の具体的な内容や記載方法(定量的情報もしくは定性的情報、またはこれらの組み合わせ)については、開示目的に照らして判断することを提案しています。また、②の事項については、例示として以下が示されているものの、注記する事項は開示目的に照らして判断するとしています。

○当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法
○当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定
○翌年度の財務諸表に与える影響


(5)適用時期

本公開草案は、2021 年3 月31 日以後終了する連結会計年度および事業年度の年度末に係る連結財務諸表および個別財務諸表から適用することを提案しています。ただし、公表日以後終了する連結会計年度および事業年度の年度末に係る連結財務諸表および個別財務諸表から適用することができることも提案しています。
本公開草案の適用初年度において、本公開草案の適用は、表示方法の変更として取り扱うものの、企業会計基準第24 号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準1」第14 項の定めにかかわらず、本公開草案に定める注記事項について、適用初年度の連結財務諸表および個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表に関する注記および前事業年度における個別財務諸表に関する注記(比較情報)に記載しないことができることを提案しています。

以上