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金融庁、「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第二次報告)」を公表

プライムジャパン・コンサルティング
会計情報リサーチ

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金融庁は、2019年10月25日、「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第二次報告)」(以下、「本調査報告」という)を公表しました。本調査報告は、2017年7月に公表された第一次報告に続くもので、監査市場の寡占状態の改善や非監査業務の位置付けという観点も含め、海外の動向を踏まえながら、より幅広く監査市場の在り方についての分析・検討を行う必要があるとされています。

本調査報告のポイント

1.パートナーローテーション等の実態調査

大手監査法人では、パートナーローテーション制度を確実に遵守するようシステム整備も含めて対応していることが確認された。一方で、パートナー以外の立場(監査補助者)で長期間従事していた者が引き続きパートナーに就任した事例など、全体として見れば相当な長期間にわたり、同一企 業の監査に関与していたと見られる事例が一部に存在していた。こうした事例においては、「新たな視点での会計監査」の観点から問題が生じるリスクが懸念されることから、当該企業の監査に関与したことのない者と組み合わせて監査チームを組成するなど、制度趣旨に則った実効的な運用を行う必要があると考えられる。

2.監査法人の交代に関する実態調査

公認会計士・監査審査会の調査によれば、監査法人の交代があった上場会社は、2016 年以降、高い水準が続いており、特に直近1 年間では140 社に上り、調査開始以来、最高水準となっている。こうした状況を踏まえると、交代に向けて十分な準備期間を確保し、社内の体制整備を行うことが、実務上の混乱・支障を最小限に抑える上で重要と考えられる。ただし、監査市場が寡占状態であり、監査法人交代の選択肢が限られている点は、制度を検討する上で引き続き課題であるとの認識が示された。また、交代時の引継ぎに関しては、前任の監査調書を手作業で書き写すという現状の方法が効率性・コスト面で適切か検討が必要と考えられる。

3.海外の議論の動向

既に監査法人のローテーション制度を導入している英国では、大手建設会社による不正会計を機に、監査制度の在り方を巡って議論が行われており、2019年4月には競争・市場庁(CMA)が調査報告書を公表している。英国では、2016 年に監査法人の強制ローテーション制度が導入されているものの、その後も法定監査市場の寡占状態が改善されないことから、監査市場の在り方があらためて議論されており、当該調査報告書では、監査市場の競争性を高める観点から、いくつかの提案がなされている。

※当局による上場大手企業の監査委員会の活動の監視
※Big4以外を含む複数の監査法人による共同監査の義務付け
※監査部門と非監査部門の経営上の分離など

なお、米国では現在も監査法人の強制ローテーション制度の導入に向けた議論は進んでいない。

以上