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経済産業省、「CGS研究会報告書」を公表

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経済産業省は、2017年3月10日、「CGS研究会報告書-実効的なガバナンス体制の構築・運用の手引-」(以下、「本報告書」という)を公表した。

経済産業省では、昨年7月に「CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)」を立ち上げ、コーポレートガバナンスに関する現状の課題と対応策について検討を進めてきた。本報告書は、同研究会での議論を踏まえ、各企業がコーポレートガバナンス改革に取組む上で検討すべき事項を提言としてまとめている。また、併せて、コーポレートガバナンスに関する企業アンケートに関する調査結果も公表している。


【サマリー】


本報告書では、各企業において検討すべき事項として以下の4点を提言している。


① 形骸化した取締役会の経営機能・監督機能の強化② 社外取締役は数合わせでなく、経営経験等の特性を重視③ 役員人事プロセスの客観性向上とシステム化④ CEOのリーダーシップ強化のための環境整備


こうした観点から、本報告書では、取締役会機能の強化、監督機能の中心となるべき社外取締役の活用、経営陣の指名・報酬の在り方、リーダーシップという4つの方向性から検討を行っている。



1.取締役会の在り方

  • 取締役会が実効的に機能するためには、意思決定機能のみならず、監督機能を果たすことや、それらの前提となる基本的な経営戦略や経営計画を決定することが重要である。そのため、いかにして取締役会でのこれらの事項の議論を充実させるかという課題に対応する必要がある。
  • 対応策としては、取締役会への付議事項を見直し、経営戦略に関する議論や監督機能に関する議論を充実させることが考えられる。

※ 「監査役設置会社においては、重要な業務執行を取締役会で決定しなければならない。実務上、重要性の基準は、弁護士会等の基準に従って、総資産の1%超としている。」「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会(第9回)」(2014年12月15日)


企業アンケートによると、取締役会の付議事項の見直しを検討している企業は50%、そのうち59%が付議基準の引上げ等により委任範囲の拡大を図っているとの調査結果が示されている。また、取締役会の実効性評価を行っている企業は全体の約7割を占めているものの、評価結果を改善計画策定に活かしている企業はそのうちの約2割にとどまっている。



2.社外取締役の活用の在り方

  • 社外取締役に期待する役割・機能、あるいは逆に期待しない役割・機能を明確にしておくことが必要である。
  • 社外取締役のうち1名は、経営経験を有する社外取締役を選任することを検討すべきである。
  • 社外取締役の報酬について、インセンティブ付与の観点から、固定報酬に加えて、業績によって付与数が変動しない自社株報酬など、インセンティブ報酬を付与することも考えられる。

企業アンケートによれば、社外取締役が期待する役割を「十分に果たしている」と回答した企業は54%にとどまっている。また社外取締役に求められる経験・知見では、経営経験が86%、専門知識が57%となっており、経営経験者等を求める企業がより多くなっている。



3.経営陣の指名・報酬の在り方

  • 社長・CEOの評価や後継者計画については、社内者とは別に客観的な立場から検証する役割が求められる。その役割を担うのが社外取締役を中心とする社外者であり、法定または任意に設置した指名委員会を利用することを検討すべきである。
  • 中長期的な企業価値向上への動機付けとするため、経営陣の報酬体系を設計する際に、業績連動報酬や自社株報酬の導入について検討すべきある。

企業アンケートによると、短期指標(売上高、ROEなど)の業績連動報酬を導入している企業は全体の61%に達するものの、中期指標の業績連動報酬を導入している企業は14%に過ぎないとの調査結果が示されている。



4.経営陣のリーダーシップ強化の在り方

  • 退任した社長・CEO経験者を自社の相談役・顧問とする場合、具体的にどのような役割を期待しているのかを明確にするとともに、その処遇も含め、法定または任意の指名委員会を活用するなどを検討すべきである。


以上





関連リンク:
・コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2016年12月末時点)


外部リンク:
・経済産業省 CGS研究会報告書の公表