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「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第48号)の公表


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企業会計基準委員会(ASBJ)は、2016年12月22日、実務対応報告公開草案第48号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」(以下、「本公開草案」という)を公表しました。本公開草案は、公共施設等運営事業において、運営権者が公共施設等運営権を取得する取引(更新投資を含む)に関する会計処理等について、実務上の取扱いを明らかにすることを目的としています。



1.経緯


2011年、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(以下、「PFI法」という)が改正され、公共施設等運営権制度が新たに導入されました。これを受けて、ASBJでは、公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等について審議を行い、今般、本公開草案として公表したものです。


図表1:公共施設等運営権制度のイメージ


【公共施設等運営権制度の概要(PFI法)】
  • 公共施設等運営権制度とは、利用料金の徴収を行う公共施設等(道路、空港、水道等の公共施設、庁舎等の公用施設、教育文化施設等の公益的施設等)について、当該施設の所有権を公共主体が有したままで、その運営権を民間事業者に設定する制度である。
  • 民間事業者は、公共施設等運営権の設定を受けて、その資金、ノウハウを活用した事業運営等を行い、利用料金を自らの収入として徴収する。
  • 公共施設等運営権は物件とみなされており、抵当権の設定等が可能である。

図表1


出典:「実務対応報告公開草案第48号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」の公表」(2016年12月22日ASBJ)より作成



2.本公開草案のポイント


(1)範囲


本公開草案は、公共施設等運営事業において、運営権者が実施する以下の取引に関する会計処理および開示に適用されることが提案されています(公開草案第2項)


  • 公共施設等運営権を取得する取引
  • 公共施設等に係る更新投資(運営権者が行う公共施設等の維持管理)を実施する取引


(2)公共施設等運営権


運営権者は、公共施設等運営権を取得した時に、管理者等と運営権者との間で締結される実施契約(PFI法第22条に規定する公共施設等運営権実施契約)において定められた運営権対価を無形固定資産として計上することが提案されています。


図表2:公共施設等運営権に関する会計処理

無形固定資産計上額の算定減価償却方法
  • 運営権対価が一括払いの場合
    • 合理的に見積られた支出額の総額(公開草案第3項)
  • 原則として、運営権設定期間を耐用年数とし、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法により期間配分する(公開草案第8項)
  • 一定の条件の下で運営権設定期間を延長することができる条項(延長オプション)が定められる場合、行使する意思が明らかな場合を除き、延長可能な期間は耐用年数に含めない(公開草案第9項)
  • 運営権対価が分割払いの場合
    • 運営権対価の支出額の総額の現在価値※1(公開草案第4項)

※1 現在価値の算定にあたっては、運営権者の契約不履行に係るリスク(信用リスク)を割引率に反映する。また支出額の総額と現在価値との差額は、運営権設定期間にわたり利息法により配分する(公開草案第5項)。

(3)更新投資


更新投資のうち、資本的支出に該当する部分(所有権が管理者等に帰属するものに限る)については、その更新投資の内容に応じて、以下のとおり会計処理することが提案されています。


図表3:更新投資に関する会計処理

更新投資の内容資産・負債の計上額減価償却方法
  • 以下の両方を満たす場合
  • ① 更新投資の大半が、管理者等が運営権者に課す義務に基づいている② 運営権の取得時に、更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関して、支出すると見込まれる額の総額と時期を合理的に見積ることができる
  • 運営権の取得時に、支出すると見込まれる額の総額の現在価値を負債として計上し、同額を資産として計上する(公開草案第12項(1))
  • 運営権設定期間を耐用年数とし、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法により、その取得原価から残存価額を控除した額を期間配分する(公開草案第15項(1))
  • 上記以外の場合
  • 更新投資を実施した時に、資本的支出に該当する部分に関する支出額を資産として計上する(公開草案第12項(2))
  • 更新投資を実施した時より、当該更新投資の経済的耐用年数にわたり、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法により、その取得原価から残存価額を控除した額を期間配分する(公開草案第15項(2))


(4)減損


公共施設等運営権は「固定資産の減損に係る会計基準」の対象となり、減損損失の判定および測定における資産のグルーピングについて、以下のとおり提案されています(公開草案第10項)。


  • 原則:実施契約に定められた公共施設等運営権の単位で行う
  • 例外:公共施設等ごとに合理的な基準※2に基づき分割した公共施設等運営権の単位で行う

※2 管理会計上の区分、投資の意思決定を行う際の単位、継続的な収支の把握がなされている単位および他の単位から生じるキャッシュ・イン・フローとの相互補完性を考慮する。

(5)プロフィットシェアリング


実施契約において、運営権対価とは別に、各期の収益があらかじめ定められた基準値を上回った時に、運営権者から管理者等に一定の金銭を支払う条項(プロフィットシェアリング条項)が設けられている場合には、当該条項に基づき各期に算定される支出額を、当該期の費用として処理することが提案されています(公開草案第11項)。



(6)開示


① 表示


公共施設等運営権に係る資産および負債の表示については、以下のとおり提案されています(公開草案第16項~19項)。


  • 公共施設等運営権は、無形固定資産の区分に公共施設等運営権などその内容を示す科目で表示する。
  • 更新投資に係る資産は、無形固定資産の区分にその内容を示す科目で表示する。
  • 運営権対価を分割で支払う場合に計上する負債は、支払期限に応じて流動負債・固定負債に区分し、公共施設等運営権に係る負債などその内容を示す科目で表示する。
  • 第12項(1)に基づき計上した更新投資に係る負債は、支払期限に応じて流動負債・固定負債に区分し、その内容を示す科目で表示する。


② 注記事項


運営権者は、次の事項を公共施設等運営事業ごとに注記することが提案されています(公開草案第20項)。


  1. 運営権者が実施する公共施設等運営事業の概要
  2. ① 公共施設等運営事業の対象とする公共施設等の内容② 実施契約に定められた運営権対価の支出方法③ 運営権設定期間④ 残存する運営権設定期間⑤ プロフィットシェアリング条項の概要など
  3. 公共施設等運営権の減価償却の方法
  4. 更新投資に係る事項
  5. ① 主な更新投資の内容および投資を予定している時期② 運営権者が採用した更新投資に係る資産および負債の会計処理の方法③ 更新投資に係る資産の減価償却の方法④ 第12項(2)に基づき更新投資に係る資産を計上する場合、翌期以降に支出すると見込まれる更新投資のうち、合理的に見積ることが可能なキャッシュ・フローの金額およびその内容


3.適用時期等


実務対応報告の公表日以後適用することが提案されています(公開草案第21項)。


コメント募集期限:2017年2月22日


以上





外部リンク:
・ASBJ 実務対応報告公開草案第48号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」の公表



(リンク更新日:2017/02/10)

・金融庁:「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等の公表について

(リンク更新日:2017/02/27)

・JICPA: 実務対応報告公開草案第48号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」に対する意見について

(リンク更新日:2017/03/03)

・JICPA:「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対する意見について

(リンク更新日:2017/03/17)

・ASBJ:実務対応報告公開草案第48号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」に寄せられたコメント