金融庁は、2025年11月26日、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の内容を改正する改正案(以下、「本改正案」という)を公表しました。
- サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備
- 人的資本開示に関する制度見直し
- その他の改正事項
コメント募集期限:2025年12月26日
経緯
2025年7月に公表された「金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 中間論点整理」(以下、「中間論点整理」という)において、2027年3月期から、時価総額が一定規模以上の東京証券取引所プライム市場上場会社に対し、段階的にサステナビリティ開示基準の適用を義務付ける方針が示されました。これに伴い、必要な制度整備を行うため、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下、「開示府令」という)と、「企業内容等の開示に関する留意事項について」(以下、「開示ガイドライン」という)の改正が提案されています。
また2025年6月に公表された「経済財政運営と改革の基本方針 2025」、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」、「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクションプログラム2025」において提言されている人的資本に関する開示を拡充するための開示府令の改正も提案されています。
本改正案の概要
Ⅰ. サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備
中間論点整理において、時価総額が一定規模以上の東京証券取引所プライム市場上場会社に対し、段階的にサステナビリティ開示基準の適用を義務付ける方針が示されたことから、サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備を行うため、以下の改正が提案されています。
1.サステナビリティ開示基準の適用
適用対象企業
- 金融庁長官が指定する取引所金融商品市場に上場する会社のうち、平均時価総額が1兆円以上の会社に対し、一般に公正妥当と認められるサステナビリティ情報の作成および開示の基準に従って、有価証券届出書および有価証券報告書(以下、「有価証券報告書等」という)の記載事項のうちサステナビリティ関連記載事項を記載することを義務づける。
- 平均時価総額は、有価証券報告書等の対象事業年度の前事業年度の末日およびその前4事業年度の末日における時価総額の平均値により判定する。
- ただし、前事業年度の末日までに上場後5事業年度が経過していない場合は、経過した事業年度の各末日における時価総額の平均値により判定する。
- 上記の「金融庁長官が指定する取引所金融商品市場」として、株式会社東京証券取引所プライム市場を告示指定する
わが国のサステナビリティ開示基準
- 上記の「一般に公正妥当と認められるサステナビリティ情報の作成および開示の基準」として、サステナビリティ基準委員会が2025年10月31日までに公表したサステナビリティ開示基準(以下、「SSBJ基準」という)を告示指定する。
経過措置としての二段階開示
- SSBJ基準の適用開始年度およびその翌年度は、SSBJ基準に従ってサステナビリティ関連記載事項を記載しないことができ、その場合は、それぞれの翌期の半期報告書の提出期限までに、当該事項を記載した訂正報告書を提出すること(二段階開示)を可能とする。
2.SSBJ基準の適用に伴う開示項目の追加
SSBJ基準の適用状況等の開示
- SSBJ基準上開示が求められる事項の記載のほか、SSBJ基準に準拠している旨、二段階開示やSSBJ基準上の経過措置の適用状況の記載が求められる。
虚偽記載等に対する責任の範囲の明確化に関する制度整備
- 将来情報やスコープ3温室効果ガス排出量に関する定量情報について、推論過程等に関する記載、これらの情報に係る社内の開示手続の記載が求められる。
見積り情報の確定値に関する自主的な開示
- 前事業年度に係る有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」その他の項目において記載した見積りの方法により算定した数値について、確定値が判明し、見積りによる数値と確定値との間に差異がある場合、半期報告書において記載することができるとする。
3.スコープ3温室効果ガス排出量の虚偽記載等に係るセーフハーバー・ルールの整備
虚偽記載等に係るセーフハーバー
- スコープ3温室効果ガス排出量に関する定量情報について、一般に合理的と考えられる範囲で差異が生じる要因や推論過程等、社内の開示手続等に関する記載がされている場合には、虚偽記載等の責任を負うものではないとする考え方を明示する。
Ⅱ. 人的人的資本開示に関する制度見直し
2025年6月に公表された「経済財政運営と改革の基本方針 2025」等において人的資本に関する開示の拡充が提言されたことを受け、以下の改正が提案されています。
従業員の給与・報酬に関する開示の充実
有価証券報告書等において、新たに以下の事項について開示が求められる。
- 企業戦略と関連付けた人材戦略およびそれを踏まえた従業員給与等の決定方針
- 従業員の平均給与の対前年比増減率
- 提出会社が主として子会社の経営管理を行う会社(持株会社)の場合、連結会社(外国会社を除く)のうち、従業員数が最も多い「最大人員会社」(最大人員会社の従業員数が、連結会社(外国会社を除く)の従業員の過半数を超えない場合には、次に従業員数の多い会社も含む)の従業員給与の平均額、その前年比増減率等
「従業員の状況」の一体的な開示
「従業員の状況」を「第1【企業の概況】」から「第4【提出会社の状況】」に移動した上で、使用人その他の従業員のみを対象としたストックオプション制度や役員・従業員株式所有制度を導入している場合には、「従業員の状況」に記載することもできることとする。
Ⅲ. その他の改正事項
総会前開示への対応
会社の開示負担を軽減し、株主総会前の有価証券報告書の開示を促進する観点から、以下の改正が提案されています。
有価証券報告書における記載
- 有価証券報告書の総会前開示を行う場合であって、有価証券報告書の記載事項等が定時株主総会またはその直後に開催される取締役会の決議事項となっているときは、当該決議事項等の概要(剰余金の配当に関するものを除く)の記載を原則不要とする。
半期報告書における記載
- 半期報告書において、中間配当基準日現在における「大株主の状況」及び「議決権の状況」を記載することができることとする。
その他所要の改正が提案されています。
適用時期
本改正案は、改正規定の公布の日から施行することが提案されています。なお、改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の規定の適用日については、それぞれの項目について以下のようにすることが提案されています。
サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備
- 2026年3月31日を基準として算定した5事業年度末の平均時価総額が3兆円以上の会社
- 2027年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等
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- 2026年3月31日を基準として算定した5事業年度末の平均時価総額が3兆円未満1兆円以上の会社
- 2028年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等
人的資本開示に関する制度見直し、総会前開示への対応
- 2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等
以上