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ASBJ、「金融商品に関する会計基準(案)」等の公表

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企業会計基準委員会(ASBJ)は、2025年10月29日、企業会計基準公開草案第89号「金融商品に関する会計基準(案)」等(以下、「本会計基準案等」という)を公表しました。

 

本会計基準案等は、我が国における会計基準を国際的に整合性のあるものとするための取組みの1つとして、「金融商品の減損」に関して、予想信用損失モデルを導入することを目的として開発が進められたものです。

 

本会計基準案等の具体的な適用時期は示されていませんが、最終基準の公表から3年程度経過した後の4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することが提案されています。

 

コメント提出期限:2026年2月6日(金)

 

 

 

経緯

 

ASBJは、我が国における会計基準を国際的に整合性のあるものとするための取組みの一つとして金融商品に関する会計基準を挙げていました。このうち、金融資産の減損については、いわゆるリーマンショック(金融危機)で顕在化した信用損失の認識が遅すぎ少なすぎる(Too Little, Too Late)問題に対処するために、国際的に予想信用損失モデルが導入されており、国際的な整合性を図る観点から、開発に着手する意義は高いと考えられていました。

 

こうした状況を踏まえ、ASBJは金融資産の減損に関する会計基準の開発に着手するとともに、予想信用損失モデルを取り入れるにあたり、金融商品の分類に関する枠組みを維持したうえで、金融商品の分類および測定に関して見直しを行い、本会計基準案等を公表しました。

 

本会計基準案等では、現行の企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下、「金融商品会計基準」という)を改正するとともに、新たに金融商品の減損に関する企業会計基準適用指針を新設するものとして、次の会計基準等を提案しています。

 

  • 企業会計基準公開草案第89号(企業会計基準第10号の改正案)「金融商品に関する会計基準(案)」
  • 企業会計基準適用指針公開草案第88号「金融資産の予想信用損失に係る会計上の取扱いに関する適用指針(案)」(以下、「予想信用損失適用指針案」という)

 

また、本会計基準案等が最終化され適用される際に、実務に資するための情報を提供することを目的として、次の補足文書が提案されています。

 

  • 「金融資産の予想信用損失に係る会計上の取扱いについて(案)」(以下、「補足文書案」という)

 

 

 

概要

 

1.開発にあたっての基本的な方針

 

本会計基準案等を開発するにあたっては、以下の理由から、IFRS会計基準の予想信用損失モデルを開発の基礎としています。

 

  • 2007年に国際会計基準審議会(IASB)とともに公表した東京合意以後は、基本的に、国際財務報告基準(IFRS会計基準)を国際的な整合性を図る対象としている。
  • 現在の信用リスク管理実務の考え方および会計基準の考え方により親和性があるのはIFRS会計基準のモデルであると考えられる。

 

また、本会計基準案等では、国際的な比較可能性を確保することを重視し、国際的な会計基準と遜色がないと認められる会計基準、すなわち、IFRS第9号「金融商品」(以下、「IFRS第9号」という)を適用した場合と同じ実務および結果となると認められる会計基準を目指した基準開発を行っており、IFRS第9号の定めを原則として取り入れつつ、一部の項目については、国際的な比較可能性を大きく損なわせない範囲で代替的な取扱いを定めることを提案しています。

 

一方、特に実務上の負担が重いと考えられる項目については、IFRS第9号を出発点として、適切な引当水準を確保した上で実務負担に配慮した会計基準を目指し、「簡素化された予想信用損失の算定方法」を定めることを提案しています。また、「簡素化された予想信用損失の算定方法」を適用するかどうかは、企業が会計基準の目的や自らの状況を踏まえ会計方針として選択することを提案しています。

 

 

2.本会計基準案等の適用範囲

 

本会計基準案等では、予想信用損失を算定する範囲について、次の項目とすることを提案しています。

 

金融商品

 

  • 債権(リースにより生じた債権や貸付金代替性私募債を含む)
  • 満期保有目的の債券
  • 金融保証契約
  • 当座貸越契約および貸出コミットメントならびにこれらに準ずる契約

 

金融商品以外

 

  • 契約資産
  • リース投資資産のうち将来のリース料を収受する権利に係る部分

 

ただし、本会計基準案等では、敷金、将来返還される差入預託保証金(建設協力金および敷金を除く)および預託保証金であるゴルフ会員権については予想信用損失を算定する範囲に含めないことを提案しています。また、その他有価証券に分類される債券についても予想信用損失を算定する範囲に含めないことを提案しています。

 

 

 

3.予想信用損失に係る会計処理(原則的な方法)

 

本会計基準案等では、原則的な方法として、一部の例外を除いてIFRS第9号と同様の取扱いを設けることを提案しています。

 

 

(1) 信用リスクの著しい増大に関する判定

 

本会計基準案等では、IFRS第9号と同様に、原則的な判定方法として、債権等の発生の認識以降におけるデフォルト発生リスクの変動に基づいて信用リスクが著しく増大しているかどうか判定し(相対的アプローチ)、それぞれ以下のように予想信用損失を算定することを提案しています。

 

  • 信用リスクが著しく増大している場合:全期間の予想信用損失(注1)を算定
  • 信用リスクが著しく増大していない場合:12か月の予想信用損失(注2)を算定

 

(注1)債権等の予想存続期間にわたるすべての生じ得るデフォルトから生じる予想信用損失

(注2)全期間の予想信用損失のうち、債権等について期末後12か月以内に生じ得るデフォルトから生じる予想信用損失を表す部分

 

また、信用リスクが著しく増大しているかどうかの判定にあたり、期日経過の情報よりも将来予測的な情報が過大なコストや労力を掛けずに利用可能な場合には、当該判定に将来予測的な情報を用いることを提案しています。

 

なお、信用リスクが著しく増大しているかどうかの判定において、貸倒実績率など明示的にデフォルトの発生確率をインプットとして含んでいないアプローチは、担保価値の影響など予想信用損失の他の発生要因を区分できるなど、一定の事項を考慮する場合には、適切なものとなる可能性があるとしています。また本会計基準案等では、期末において一定の要件を満たした場合に債権等について信用リスクが低いと判断し、信用リスクが著しく増大していないと推定できることを提案しています。

 

 

(2)予想信用損失の算定方法

 

本会計基準案等ではIFRS第9号の予想信用損失モデルと同様に、次の項目を反映する方法により算定することを提案しています。

 

 

  1. 一定範囲の生じ得る結果を評価することによって算定される偏りがなく確率加重された金額
    •  
    • 信用損失が発生しないことが最も可能性の高い場合や信用損失が発生する可能性が非常に低い場合であっても、信用損失が発生する可能性と発生しない可能性の両方の可能性を反映して、信用損失が発生するリスクまたは確率を考慮する。
    •  
  2. 貨幣の時間価値
    •  
    • 予想信用損失の算定において、デフォルトが発生すると予測される時点までの期間ではなく、期末までの期間にわたり、予想信用損失を割り引く。
    • 割引率として、債権等の発生の認識時における実効金利またはその近似値を用いる。
    •  
  3. 過去の事象、現在の状況および将来の経済状況の予測に関して、期末において過大なコストや労力を掛けずに利用可能な合理的で裏付け可能な情報
    •  
    • 期末において過大なコストや労力を掛けずに利用可能な合理的で裏付け可能な情報には、予想される期限前償還の影響、借手に固有の要因、一般的な経済状況、および期末における現在の状況と将来の状況の両方が含まれる。
    • 貸倒実績などの過去の情報を用いる場合には、過去の期間に影響を与えていない現在の状況および将来の状況の予測を反映するとともに、過去の期間における状況のうち、将来の契約上のキャッシュ・フローに関連性のない状況の影響を除去する調整を行う。

 

なお、収益認識会計基準の範囲に含まれる取引から生じた受取手形、売掛金等については、実務上の便法として、貸倒実績に基づき、一定の期日経過日数に応じた引当率を定める方法を使用できることを提案しています。

 

 

 

4.予想信用損失に係る会計処理(簡素化された方法)

 

本会計基準案等では、原則的な方法に関する提案のうち、実務負担に配慮する観点から特に実務上の負担が重いと考えられる項目について、「簡素化された予想信用損失の算定方法」を次のように定めることを提案しています。

 

①信用リスクの著しい増大に関する判定

債務者の財政状態および経営成績等に応じて付与している内部信用格付に基づき判定する方法を用いる。

 

②債権等の予想存続期間

リスク特性が類似した債権等のグループごとに当該グループに係る平均残存期間を用いる。

 

③将来予測シナリオ

最も可能性が高い中心となる将来予測シナリオのみを考慮する。

 

④時間価値の考慮

実効金利の代わりに約定金利(または約定金利相当の率)を用いて割引を行う。

 

本会計基準案等では、これらの各項目について個別に選択して適用できることを提案しています。また、この選択が重要な会計方針に該当すると判断した場合には、重要な会計方針として注記することが考えられるとしています。

 

 

 

 

5.償却原価に係る会計処理

 

 

実効金利法および実効金利の定義

 

本会計基準案等では、予想信用損失モデルの適用対象となる貸付金(貸付金代替性私募債を含む)および重要な金融要素を含む債権ならびに満期保有目的の債券について、原則として、IFRS第9号と同様に、実効金利法による償却原価法(実効金利法における利息法)によることを提案しています。また、実効金利法を「金融資産の予想存続期間を通じての将来の期待キャッシュ・フローを実効金利により割り引く方法」と定義することを提案しています。本会計基準案等では実効金利に次のものが含まれることを提案しています。

 

  • 契約の当事者間で授受されるすべての手数料およびポイントのうち実効金利の不可分な一部であるもの(一定の要件を満たす手数料については、実効金利の計算に含めず、収益認識会計基準に準じて会計処理することができる)
  • 金融資産の取得または売却に直接起因する増分コスト
  • その他のすべてのプレミアムまたはディスカウント

 

また、将来の期待キャッシュ・フローの見積りにあたっては、例えば、期限前償還、期限延長、コールおよび類似のオプションなど、金融商品のすべての契約条件を考慮するものの、予想信用損失は考慮しないことを提案しています。

 

 

償却原価の算定

 

本会計基準案等では、上記の実効金利法における利息法に代えて、次の方法を採用することができることを提案しています。

 

満期保有目的の債券

金利差額調整法における定額法

 

購入した貸付金および重要な金融要素を含む債権のうち発生の認識時に信用減損していないもの

金利差額調整法における定額法

 

組成した貸付金および重要な金融要素を含む債権のうち発生の認識時に信用減損していないもの

約定金利(または約定金利相当の率)

 

購入または組成した信用減損債権

一定の場合、金利差額調整法における定額法

 

 

 

6.開示

 

開示目的

 

本会計基準案等では、信用リスクに関する開示目的を「信用リスクに関する開示目的は、企業の事業目的に照らした債権等の重要性を踏まえ、信用リスクが将来キャッシュ・フローの金額、時期および不確実性に与える影響を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示することである。」と定めることを提案しています。

 

注記事項

 

本会計基準案等では、上記の開示目的を達成するため、次の事項を注記することを提案しています。また、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しないことを提案しています。

 

予想信用損失の分解情報

 

  • 予想信用損失引当金の期首残高から期末残高への調整表
  • 予想信用損失引当金の変動に重要性がある場合には、当期中の予想信用損失引当金の変動に関する説明
  • 当期中の債権等の償却原価の著しい変動がある場合、予想信用損失引当金の変動に対する影響に関する説明

 

信用リスク管理実務および予想信用損失の算定プロセスに関する情報

 

  • 信用リスク管理実務および信用リスク管理実務が予想信用損失の算定にどのように関連するかを説明するための情報(信用リスクの著しい増大に関する判定方法など)
  • 予想信用損失の算定に用いるインプット、仮定および見積技法を説明するための情報

 

当期および翌期以降の財務諸表への影響を理解するための情報

 

  • 信用リスク格付ごとに債権等の取得価額または償却原価、および信用リスクに対するエクスポージャー
  • 担保および他の信用補完が予想信用損失の金額に与える影響を理解できるようにするための情報
  • 担保権を実行したことにより当期中に資産を取得した場合には、期末において保有している当該資産の性質および帳簿価額など
  • 当期中に直接減額した金額のうち、依然として履行強制活動を継続している債権等の契約上の未回収残高

 

なお、注記事項を記載するにあたり、どの注記事項にどの程度の重点を置くか、また、どの程度詳細に記載するかは、開示目的に照らして判断することとなります。また、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項については記載しないことができます。

 

 

 

7.補足文書

 

補足文書案は、企業会計基準、企業会計基準適用指針、実務対応報告および移管指針を追加または変更するものではなく、これらの適用にあたって参考となる文書であり、実務に資するための情報を提供することを目的としています。補足文書案には次の項目が含まれています。

 

  1. 信用リスクの著しい増大の判定
  2. 簡素化された予想信用損失の算定方法における信用リスクの著しい増大に関する判定
  3. 満期保有目的の債券に係る予想信用損失の算定
  4. 貸出コミットメント等に係る予想信用損失の算定
  5. 米国会計基準におけるCECL(Current Expected Credit Loss)モデルに基づく情報の開示方法

 

 

 

8.適用時期および経過措置

 

適用時期

 

本会計基準案等の具体的な適用時期は提案されていませんが、最終基準の公表から3年程度経過した日を想定している旨を示しています。早期適用ができることも提案しています。

 

経過措置

 

本会計基準案等では、経過措置について次のように提案しています。

  • 適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金およびその他の包括利益累計額または評価・換算差額等に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する。
  • 適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行うことを要しない。
  • 注記事項を適用初年度の比較情報に記載することを要しない。

 

以上