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ASBJ、「期中財務諸表に関する会計基準(案)」等の公表

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企業会計基準委員会(ASBJ)は、2025年4月23日、企業会計基準公開草案第83号「期中財務諸表に関する会計基準(案)」等を公表しました。

 

企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」(以下、「中間会計基準」という)と企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下、「四半期会計基準」という)を統合した会計基準等の開発を提案するものです。

 

コメントの提出期限:2025年6月30日

 

 

経緯

 

ASBJは、2024年4月からの四半期報告書制度の廃止を受け、2024年3月、中間会計基準および企業会計基準適用指針第32号「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下、まとめて「中間会計基準等」という)を公表しました。

 

しかしながら、上場会社や財務諸表利用者から、中間決算と四半期決算は同じ会計基準等に基づいて行うべきであるとの意見が寄せられていました。

 

ASBJは、四半期会計基準および企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下、まとめて「四半期会計基準等」という)を統合した会計基準等の開発を決定し、今般、以下の企業会計基準および企業会計基準適用指針の公開草案(以下、まとめて「本期中会計基準案等」という)を公表しました。

 

  • 企業会計基準公開草案第83号「期中財務諸表に関する会計基準(案)」
  • 企業会計基準適用指針公開草案第85号「期中財務諸表に関する会計基準の適用指針(案)」
  • 企業会計基準公開草案第84号「『中間連結財務諸表等の作成基準』の一部改正(案)」(以下、「中間作成基準等の一部改正案」という)
  • 企業会計基準公開草案第85号「『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準』の一部改正(そのX)(案)」
  • 企業会計基準公開草案第86号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(そのX)(案)」
  • 企業会計基準適用指針公開草案第86号(企業会計基準適用指針第6号の改正案)「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(案)」

 

 

 

概要

 

 

検討の前提

 

本期中会計基準案等は、改正後の金融商品取引法に基づく第一種中間財務諸表と、金融商品取引所の定める規則に基づく第1四半期および第3四半期の四半期財務諸表の両方に適用可能となるように、中間会計基準と四半期会計基準を統合することを目的としており、次の点を前提とすることを提案しています。

 

  • 改正後の金融商品取引法に基づく半期報告書制度に適用できるように、期首から6か月間を1つの会計期間(中間会計期間)として作成する第一種中間財務諸表に適用可能な会計処理を定めることを原則とすること
  • 中間会計基準の経過措置は、金融商品取引法等の一部改正法の成立日から施行日までが短期間であることを理由に定めていたもので、経過措置としてそのまま残すことは困難であり、個別に検討が必要となること

 

 

 

本期中会計基準案等の主な提案

 

 

(1)四半期会計基準と中間会計基準の統合

 

企業の報告頻度(年次、半期、または四半期)によって、年次の経営成績の測定が左右されてはならないとする原則を採用する。

 

第一種中間財務諸表および四半期財務諸表に共通の取扱いと、四半期財務諸表のみに適用される取扱いを区分して定める。

 

(提案理由)

 

金融商品取引法に基づく第一種中間財務諸表と金融商品取引所の定める規則に基づく第1四半期、第3四半期に係る財務情報について、同じ企業が作成する期中財務諸表であるにもかかわらず、会計処理に不整合が生じることは適切ではなく、会計処理が同一の結果となるよう、上記の原則の採用を提案している。

 

なお、当該原則を採用した場合に会計処理に影響が生じる可能性のある項目は、中間会計基準において経過措置として定められた以下の項目とする。

 

  • 有価証券の減損処理に係る切放し法
  • 棚卸資産の簿価切下げに係る切放し法
  • 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理
  • 未実現損益の消去における簡便的な会計処理

 

 

(2)有価証券の減損処理と棚卸資産の簿価切下げに係る方法

 

期中会計期間末に計上した有価証券の減損処理に基づく評価損の戻入れと期中会計期間末における棚卸資産の簿価切下げは、洗替え法による。

 

ただし、本期中会計基準案等の適用前に切放し法を適用していた場合には、継続して切放し法を適用できる。この場合にその旨を注記する。

 

(提案理由)

 

上記(1)で示した原則は、企業の報告頻度で会計処理の結果が異なることになる中間切放し法や四半期切放し法とは整合しないため、本期中会計基準案等では洗替え法を原則とすることを提案している。

 

一方、従前から期中会計期間末に切放し法を適用していた企業において、これまでの会計方針の選択の判断が必ずしも否定されるものではないと考えられることなどから、本期中会計基準案等の適用前から切放し法を適用していた場合、継続適用を認めることを提案している。

 

 

(3)一般債権の貸倒見積高の算定と未実現損益の消去における簡便的な会計処理

 

一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理

 

期中会計期間末における一般債権の貸倒見積高について、次を使用して算定できる。

 

  • 前年度末決算に算定した貸倒実績率等の合理的な基準 (一般債権の貸倒実績率等が前年度の財務諸表の作成に使用した貸倒実績率等と著しく変動していないと考えられる場合)
  • 期中に見直し後の貸倒実績率等の合理的な基準 (期中に前年度の貸倒実績率等から著しい変動があり見直しを行い、その後の期中会計期間末に見直し後の貸倒実績率等と著しく変動していないと考えられる場合)

 

未実現損益の消去における簡便的な会計処理

 

連結会社相互間の取引で取得した棚卸資産に含まれる期中会計期間末の未実現損益の消去は、期中会計期間末在庫高に占める当該棚卸資産の金額と当該取引に係る損益率を合理的に見積って計算できる。また、損益率は次を使用して算定できる。

 

  • 前年度の損益率や合理的な予算制度に基づいて算定された損益率 (前年度から取引状況に大きな変化がないと認められる場合)
  • 期中に見直し後の損益率や見直し後の合理的な予算制度に基づいて算定された損益率 (期中に前年度から取引状況に大きな変化があり見直しを行い、その後の期中会計期間末に見直し後の損益率や見直し後の合理的な予算から取引状況に大きな変化がないと認められる場合)

 

(提案理由)

 

中間会計基準では、簡便的な会計処理として上記①と同様の方法を認め、前四半期決算で算定した基準等を中間会計期間に使用する方法(上記②)は経過措置として認めていた。

 

本期中会計基準案等では、これらの定めを引き継ぎ、経過措置として定めていた取扱いも、期中会計期間末の一般債権の貸倒見積高または損益率の簡便的な見積方法であることを踏まえ、期中に見直しが行われている場合は、見直し後の期中会計期間末で当該見直し後の基準等を用いることができるとし、簡便的な会計処理として定めることを提案している。

 

 

(4)他の会計基準等についての修正

 

他の企業会計基準等で定めている四半期財務諸表の取扱いを本期中会計基準案等に取り込むにあたっては、次のとおりとする。

 

  • 会計処理は、期中特有の会計処理と簡便的な会計処理を除き、年度と同様となるため、四半期固有の取扱いを定めたもののみ本期中会計基準案等に引き継ぐ
  • 注記事項は、本期中会計基準案等で開示を求めていない注記事項は原則として期中財務諸表で開示を要しない旨を基本的な考え方として示し、その考え方に従って開示を求めるもののみを引き継ぐ(四半期財務諸表での注記省略の定めは引き継がない)

 

他の企業会計基準等で第二種中間財務諸表の取扱いを定めているが、四半期財務諸表と第一種中間財務諸表の取扱いを定めていない次の項目について、期中財務諸表における取扱いを明らかにし、本期中会計基準案等に取り込む。

 

  • 自己株式の処分及び消却
  • 役員賞与の会計処理

 

 

(5)中間作成基準等の一部改正案

 

中間作成基準等の適用対象となる中間連結財務諸表・中間財務諸表が第二種中間連結財務諸表・第二種中間財務諸表であることを明確化する。

 

他の企業会計基準等における中間財務諸表の取扱いは、第二種中間連結財務諸表・第二種中間財務諸表の取扱いとして、内容を維持したまま中間作成基準等に取り込む。

 

財務諸表等規則等のみで定めている第二種中間連結財務諸表・第二種中間財務諸表の取扱いは、本期中会計基準案等に取り込まない。

 

(提案理由)

 

第二種中間連結財務諸表・第二種中間財務諸表は、金融商品取引法の枠組みで求められ、その開示実務は財務諸表等規則等によっている部分が多い。本期中会計基準案等の開発でこの点の変更は意図していないため、これまでに企業会計基準等に含めていた内容を維持して取り込むことを提案している。

 

 

(6)適用時期等

 

公表後最初に到来する年の4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の最初の期中会計期間から適用する。

 

本期中会計基準案等の定めに従い会計方針を変更する場合、新たな会計方針を適用初年度の最初の期中会計期間から将来にわたって適用する(経過措置)。

 

(提案理由)

 

一部の項目を除き、基本的に四半期会計基準と中間会計基準の定めと考え方を引き継いでおり、会計方針の変更が行われる場合は限定的と考えられること、また、できるだけ速やかに適用可能とするニーズがあると考えられることから、上記の適用時期を提案している。

 

 

以上