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金融庁、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案(政策保有株式の開示)を公表

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金融庁は、2024年11月26日、政策保有株式の開示に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案(以下「本改正案」という)を公表しました。

 

政策保有株式(保有目的が純投資以外の上場株式)については、2010年3月、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」で導入され、有価証券報告書における「株式の保有状況」で開示が行われてきましたが、本改正案により開示の拡充が図られることになります。

 

 

本改正案の背景

 

金融庁では、毎年度、上場会社等が提出した有価証券報告書の記載内容の適正性の確保および充実化促進の観点から、有価証券報告書のレビュー制度を実施しています。

 

このうち、2023年度の有価証券報告書レビューにおいて、「株式の保有状況」の開示のうち、政策保有目的から純投資目的に保有目的を変更した株式の開示状況について、実質的に政策保有株式を継続保有していることと差異がない状態になっているとの課題が識別されていました。

 

この点、2024年6月に公表された「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024」においても、政策保有株式の開示に関する今後の方向性として、実態を踏まえた開示がなされているか等、企業に対し、コーポレートガバナンス・コードに照らして保有の合理性についての検証を尽くすよう促す旨の提言がなされていました。

 

また、2024年8月に公表された「2024事務年度金融行政方針」においては、「政策保有株式の開示の適切性について有価証券報告書レビュー等で検証を行うとともに、政策保有株式に係る開示事項の追加等を検討する」との方針が示されていました。

 

こうした経緯を踏まえ、今般、有価証券報告書および有価証券届出書(以下、「有価証券報告書等」という)における「株式の保有状況」の開示に関して、以下の改正を行うこととなりました。

 

 

本改正案の概要

 

本改正案では、「企業内容等の開示に関する内閣府令」および「企業内容等の開示に関する留意事項について(開示ガイドライン)」の改正が予定されています。

 

 

1.企業内容等の開示に関する内閣府令

 

当期を含む最近5事業年度以内に政策保有目的から純投資目的に保有目的を変更した株式(当事業年度末において保有しているものに限る)について、以下の項目を開示することが要請されています。

 

  • 銘柄
  • 株式数
  • 貸借対照表計上額
  • 保有目的の変更年度
  • 保有目的の変更の理由及び変更後の保有又は売却に関する方針

 

 

2.企業内容等の開示に関する留意事項について(開示ガイドライン)

 

従前のパブリックコメントの回答内容(「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」に対するパブリックコメントの概要およびコメントに対する金融庁の考え方(2019年1月31日)No.68)等を踏まえ、「純投資目的」の考え方が開示ガイドラインで明示されます。

 

  • 「純投資目的」とは、専ら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とすることをいう。
  • 例えば、当該株式の発行者が提出会社の株式を保有する関係にあること、当該株式の売却に関して発行者の応諾を要すること等により、発行者との関係において提出会社による売却を妨げる事情が存在する株式は、純投資目的で保有しているものとはいえないことに留意する。

 

 

適用時期

 

改正後の規定は公布の日から施行される予定です。


なお、改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の規定は、2025年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用予定となっていますので、2025年3月期の有価証券報告書から改正後の規定に基づく開示が必要となる点に留意が必要です。

 

以上