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企業会計基準委員会(ASBJ)は、2024年3月22日、「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」の改正(以下、「改正適用指針」という)を公表しました。
改正適用指針により、事業を分離・独立させる手段であるスピンオフのうち、持分の一部をスピンオフ実施会社に残すスピンオフ(以下、「パーシャルスピンオフ」という)の会計処理において、スピンオフ実施会社は現物配当の対象となる子会社株式を時価ではなく帳簿価額で減額処理することとなります。
令和5年度税制改正では、完全子会社株式の現物分配の手法によるスピンオフについて、子会社株式の一部(20%未満)を残す株式分配であって、一定の要件を満たす場合には、スピンオフ実施会社における譲渡損益や現物分配を受ける株主における配当を課税対象外とする特例措置(いわゆるパーシャルスピンオフ税制)が創設されました。
令和5年度税制改正では、パーシャルスピンオフ税制に適用期限が定められており、2024年3月31日までに事業再編計画の認定を受ける必要がありましたが、令和6年度税制改正大綱において適用期限を4年延長する改正が盛り込まれています。
スピンオフの活用は日本の経済環境の活性化の一助となり得るため、税務や会社法等の整備が進められる中、会計上は、すべての完全子会社株式を配当するスピンオフとパーシャルスピンオフとで会計処理が異なっていたことから、企業がスピンオフを検討するうえで課題となる可能性がありました。
上記に対応するため、2023年3月にスピンオフの会計処理を検討することが企業会計基準諮問会議より提言され、ASBJは、2023年10月に現物配当の会計処理を一部改正する公開草案を公表しました。ASBJは広くコメント募集を行ったのち、公開草案に寄せられたコメントを検討し、今般、改正適用指針が公表されました。
主な改正内容は、以下のとおりです。
改正適用指針では、次の要件を満たす取引(以下、「改正の対象となるパーシャルスピンオフ取引」とする)の会計処理を定めています。
現物配当の会計処理は、改正前より「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」第10項において、原則として、配当の効力発生日における配当財産の時価と適正な帳簿価額との差額を、配当の効力発生日の属する期の損益として計上し、配当財産の時価をもって、その他資本剰余金またはその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額することが定められていました。
しかしながら、保有する子会社株式のすべてを株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)する場合等については、配当の効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額をもって、その他資本剰余金またはその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額する例外的な処理が定められていました。
改正適用指針では、従前の例外的な処理の対象に加えて、保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し、残存する株式が子会社株式に該当しなくなった場合についても例外的な処理の対象とすることが定められました。
この改正の対象となるパーシャルスピンオフ取引に例外的な処理が適用される理由については、従前の例外的な処理の対象を前提として、主に次の2点を合わせた検討が行われたことによります。
このように例外的な処理が適用される結果、スピンオフ実施会社の個別財務諸表上、改正の対象となるパーシャルスピンオフ取引にかかる損益は計上されないことになります。
改正適用指針は、公表日以後適用されます。
なお、適用日の前に行われた改正の対象となるパーシャルスピンオフ取引については、適用日において会計処理の見直しや遡及的な処理を行ないません。
以上