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IASB、交換可能性の欠如に関する新たなIFRS要求事項(IAS第21号の修正)を公表

プライムジャパン・コンサルティング
会計情報リサーチ

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国際会計基準審議会(IASB)は、2023年8月15日、国際会計基準(IAS)第21号の修正(以下、「本修正」という)を公表しました。本修正により、ある通貨が他の通貨に「交換可能である」とはどのような場合なのかの定義が示され、交換可能でない場合に使用すべき直物為替レートを企業が決定する際の見積方法が提示されています。

 

 

概要

 

IAS第21号は、企業が外貨建取引を機能通貨で報告する、または在外営業活動体の業績を異なる通貨に換算する際に企業が使用する為替レートを定めています。これまで、IAS第21号は、2つの通貨間の交換可能性が一時的に欠如している場合に使用すべき為替レートを定めていましたが、ある通貨から他の通貨への交換が当局により制限されていること等により、交換可能性が長期的に欠如している場合に使用すべき為替レートについては規定されていませんでした。

 

本修正では、以下に関する要求事項が追加されています。

 

  1. ある通貨が他の通貨に「交換可能である」ことの定義(交換可能性の評価)
  2. 交換可能でない場合に使用する直物為替レートの見積り

 

 

交換可能性の評価

 

本修正では、ある通貨が他の通貨に交換可能であるとは、一定の取引時間枠内において、強制可能な権利義務を生じさせる市場メカニズムを通じて、他の通貨に交換することができる場合と定義されています。

 

2つの通貨間の交換可能性の評価にあたって考慮すべき事項としては、①一定の取引時間枠、②他の通貨を獲得する能力、③強制可能な権利義務を生じさせる市場メカニズム、④他の通貨を獲得する目的、⑤獲得する他の通貨の金額的重要性などが示されています。

 

交換可能でない場合に使用する直物為替レートの見積り

 

ある通貨が他の通貨に交換可能でない場合、測定日における直物為替レートを見積ることとされています。直物為替レートを見積る目的は、通常の経済状況において、測定日に市場参加者間での秩序ある交換取引が行われる場合の取引レートを反映することにあります。

 

本修正では、直物為替レートの具体的な見積方法は提示されていませんが、以下を用いて測定日における直物為替レートを決定できるとされています。

 

  1. 観察可能で調整されていない為替レート
  2. その他の見積技法

 

観察可能で調整されていない為替レートとしては、例えば、①企業が交換可能性を評価する目的以外の目的での直物為替レート、②当該通貨の交換可能性の回復後、企業が特定の目的のために他の通貨を入手することができる最初の為替レートなどが示されています。

 

また、その他の見積技法としては、例えば、新たな要求事項の目的を満たすために必要に応じて調整される観察可能な為替レートなどが示されています。

 

適用日

 

本修正は、2025年1月1日以後開始する事業年度から適用されます。なお、早期適用も認められています。

 

本修正には、通貨が交換可能でない場合の影響、リスクおよび見積られた為替レートならびに使用する技法に関する新たな開示が含まれています。

 

以上

 

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