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金融庁、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案(「重要な契約」の開示)を公表

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金融庁は、2023年6月30日、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案(以下、「本改正案」という)を公表しました。

 

本改正案では、企業が締結している「重要な契約」について、開示すべき契約の類型や求められる開示内容を具体的に明らかにしており、企業・株主間のガバナンスに関する合意や株主保有株式の処分・買増し等に関する合意などについて、有価証券報告書等での開示を求めています。

 

本改正案は、有価証券報告書および有価証券届出書(以下、有価証券報告書等」という)への記載については、2025年3月31日以後に終了する事業年度から、財務上の特約に係る臨時報告書の提出については、2025年4月1日以後からの適用が予定されています。

 

経緯

 

現在、我が国における「重要な契約」に関する開示については、企業が「重要な契約」を締結している場合、有価証券報告書等の「事業の状況」において「経営上の重要な契約等」にその概要を記載することが求められています。また、借入金や社債等に付された財務上の特約(コベナンツ、財務制限条項等が含まれる)のうち、投資判断に重要な影響を及ぼすと認められるものについては、財務諸表への注記が求められています。

 

しかしながら、同様の制度を有する諸外国と比較した場合、法令上の規定内容には大きな相違がないものの、我が国の開示の実態は不十分であるとの指摘がなされていました。例えば、企業・株主間のガバナンスに関する合意について、株主の大量保有報告書には開示されていても、提出会社の有価証券報告書等には開示されていないケースや、株主保有株式の処分・買増し等に関する合意については、契約締結時には合意の存在が開示されずに、後日、会社・株主間で紛争が顕在化した段階になって初めて当該合意の存在が開示されるケースなどが指摘されていました。

 

このような指摘を踏まえ、2022年6月に公表された「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告」では、個別分野における「重要な契約」について、開示すべき契約の類型や求められる開示内容を具体的に明らかにすることが提言されていました。本改正案は、当該ディスクロージャーワーキング・グループ報告を踏まえ、有価証券報告書等および臨時報告書の記載事項について、改正が提案されています。

 

改正案の概要

 

本改正案では、従来の「重要な契約」に関する開示内容に加えて、個別分野において開示すべき契約の3つの類型を示し、開示内容を規定しています。具体的には、1.企業・株主間のガバナンスに関する合意、2.企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意、3.ローン契約と社債に付される財務上の特約に関する3つの項目です。

 

これらが存在する場合、有価証券報告書等での開示が求められることに加え、ローン契約と社債に付される財務上の特約について、ローン契約の締結時または社債の発行時等に臨時報告書の提出が求められることになります。

 

1.企業・株主間のガバナンスに関する合意

 

有価証券報告書等の提出会社(提出会社が持株会社の場合、その子会社を含む)が、提出会社の株主との間で、以下のガバナンスに影響を及ぼし得る合意を含む契約を締結している場合、①契約の概要(年月日、相手方、合意の内容を含む)、②合意の目的、③取締役会における検討状況その他の提出会社における合意に係る意思決定に至る過程、④合意が提出会社の企業統治に及ぼす影響(影響を及ぼさないと考える場合には、その理由)を記載することが求められます。

 

  1. 役員候補者指名権の合意
  2. 議決権行使内容を拘束する合意
  3. 事前承諾事項等に関する合意

 

2.企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意

 

有価証券報告書等の提出会社が、提出会社の株主(大量保有報告書を提出した株主その他の重要な株主)との間で、以下の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意を含む契約を締結している場合、①契約の概要(年月日、相手方、合意の内容を含む)、②合意の目的、③取締役会における検討状況その他の提出会社における合意に係る意思決定に至る過程を記載することが求められます。

 

  1. 保有株式の譲渡等の禁止・制限の合意
  2. 保有株式の買増しの禁止に関する合意
  3. 株式の保有比率の維持の合意
  4. 契約解消時の保有株式の売渡請求の合意

 

3.ローン契約と社債に付される財務上の特約

 

有価証券報告書等の提出会社または連結子会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結または社債の発行をしている場合であって、その期末残高が連結純資産額の10%以上である場合、①契約の概要(年月日、相手方(ローン契約の場合)、金額および期限、担保の内容を含む)②財務上の特約の内容を有価証券報告書等で開示することが求められます。

 

また、その元本または発行額の総額が連結純資産額の3%以上である場合には、①契約の概要(年月日、相手方(ローン契約の場合)、金額および期限、担保の内容を含む)②財務上の特約の内容を記載した臨時報告書の提出が求められます。

 

適用時期

 

本改正案の適用時期は、以下のとおりとなっています。

 

  • 「重要な契約」の有価証券報告書等への記載
  • 2025年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用

 

  • 財務上の特約に係る臨時報告書の提出
  • 2025年4月1日以後に提出される臨時報告書から適用

 

 

以上

 

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