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企業会計基準委員会(ASBJ)は、2016年3月17日、修正国際基準公開草案第2号「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)の改正案」(以下、「本公開草案」という)を公表しました。
ASBJは、2015年6月30日、「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」(JMIS)を公表していました。これは2012年12月31日までに国際会計基準審議会(IASB)により公表された会計基準および解釈指針(以下、「会計基準等」という。)を対象としてエンドースメント手続を行ったものでした。本公開草案は、その後、2013 年中にIASB により公表された会計基準等をエンドースメント手続の対象として検討を行ったものです。
IFRS任意適用拡大のための取組み
本公開草案でエンドースメント手続の対象となったのは、2013 年中にIASB により公表された新規のまたは改正された以下の会計基準等です。
① IFRS第9号「金融商品」(ヘッジ会計並びにIFRS第9号、IFRS第7号及びIAS第39号の修正)(2013年11月公表)(以下、「IFRS第9号(2013年)」という)② IFRIC解釈指針第21号「賦課金」(2013年5月公表)(以下、「IFRIC第21号」という)③ 「非金融資産に係る回収可能価額の開示」(IAS第36号の修正)(2013年5月公表)④ 「デリバティブの契約更改とヘッジ会計の継続」(IAS第39号の修正)(2013年6月公表)⑤ 「確定給付制度:従業員拠出」(IAS第19号の修正)(2013年11月公表)⑥ 「IFRSの年次改善 2010-2012 年サイクル」(2013年12月公表)⑦ 「IFRSの年次改善 2011-2013 年サイクル」(2013年12月公表) |
エンドースメント手続は、IASBにより公表された会計基準等について、我が国で受入可能か否かを判断したうえで、必要に応じて一部の会計基準等について「削除又は修正」(エンドースメント)し、金融庁において指定する仕組みです。判断基準としては、①会計基準に係る基本的な考え方の相違、②実務上の困難さ、③周辺制度との関連等を勘案することとされています。その結果、本公開草案では、IFRS第9号(2013年)に関して、以下の2 項目について「削除又は修正」を提案しています。
① その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資をヘッジ対象とした公正価値ヘッジのノンリサイクリング処理② キャッシュフロー・ヘッジにおけるベーシス・アジャストメント
なお上記項目とは別に、IFRIC第21号についても「削除又は修正」を行う必要があるかどうか検討がなされましたが、 「削除又は修正」を必要最小限とする等の観点から、「削除又は修正」を行うまでの重要性はないものと判断されたことなどから、本公開草案ではエンドースメントを行わないこととされています。
項目 | エンドースメント内容 |
---|---|
① 公正価値ヘッジの ノンリサイクリング処理 | IFRS第9号(2013年11月)では、その他の包括利益(OCI)を通じて公正価値で測定することを選択した資本性金融商品への投資をヘッジ対象として公正価値ヘッジを行う場合に、ヘッジ手段に関してOCIに認識した利得または損失の累計額は純損益にリサイクリング処理しないこととされている。 本公開草案では、上記取扱いについて「削除又は修正」を行い、純損益にリサイクリング処理する提案を行っている。初度エンドースメント手続において、資本性金融商品への投資に関して生じるOCIのノンリサイクリング処理の取扱いをリサイクリング処理するように「削除又は修正」を行ったことに対応するものである。 |
② キャッシュフロー・ヘッジ における ベーシス・アジャストメント | IFRS第9号(2013年)では、非金融資産または非金融負債に関する予定取引のキャッシュフロー・ヘッジに関して、当該資産または負債が認識される等の場合に、ヘッジ手段に関して累積されたOCI累計額(キャッシュフロー・ヘッジ剰余金)を当該資産または負債の当初の原価等に含め、OCI累計額の変動は包括利益計算書のOCIに反映させないとされている。 本公開草案では、当該規定の「削除又は修正」を行い、OCI累計額の変動をOCIに反映させる提案を行っている。初度エンドースメント手続において、OCIに含まれたすべての項目についてリサイクリング処理が必要であるとした理由の1 つとして、純損益とOCIは本質的に認識時期の相違であるとの考え方を示しており、この点との整合性を図ったものである。 |
コメント募集期間は2016年5月31日(火)までです。
関連リンク:
IFRSを巡る国内動向と展望 No.2 ~GAAP差異と修正国際基準の意義(1)~
IFRSを巡る国内動向と展望 No.3~ GAAP差異と修正国際基準の意義(2)~
外部リンク:
ASBJ、「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」の改正案の公表
以上