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【会計情報トピックス】COSO 内部統制の統合的フレームワーク「エグゼクティブ・サマリー」の公表


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coso2016【PDFはこちら】

2016年1月12日、日本公認会計士協会(JICPA)は2013年5月に公表された「COSO 内部統制の統合的フレームワーク」(以下、「新COSOフレームワーク」という)の「フレームワーク篇:エグゼクティブ・サマリー」の日本語版をウェブサイトに公表しました※1


※1. 新COSOフレームワーク全篇の日本語版は、2014年1月にJICPAより書籍として刊行されている。


外部リンク:JICPA COSO 内部統制の統合的フレームワーク「エグゼクティブ・サマリー」の公表について


なお参考情報として、以下に新COSOフレームワークの概要を掲載しておきます。



1. COSO 内部統制の統合的フレームワークの改訂の経緯


(1)改訂の経緯


改訂の経緯


1992年にトレッドウェイ委員会支援組織委員会(COSO)より公表された「内部統制の統合的フレームワーク」(以下、旧COSOフレームワーク)の見直しが2010年より開始され、公開草案を経て、2013年5月、20年ぶりにCOSOフレームワークが改訂された。
改訂にあたって、旧COSOフレームワークにおける内部統制の定義や評価方法は基本的に踏襲しつつも、近年のビジネス環境の急激な変化に適応できる内部統制システムの構築・維持を図ること、またより包括的で概念的なガイダンスの提供と実務的な事例を多く提示することによる利便性の向上に主眼が置かれている。



(2)新COSOフレームワークの構成


【改訂の対象となったフレームワーク、ツールおよびガイダンス等】

改訂対象のフレームワーク


【内部統制の統合的枠組み(Internal Control – Integrated Framework)】

  1. エグゼクティブ・サマリー(Executive Summary)
  • 取締役会、CEO、その他役員、上級管理者向けの概要説明
  1. フレームワークと付属資料(Framework and Appendices)
  • 内部統制の定義と構成要素、関連する原則を含む有効な内部統制の要件の提示
  • 内部統制の設計、適用、運用および有効性評価のためのガイドライン
  1. 内部統制システムの有効性評価のための説明ツール(Illustrative Tools for Assessing Effectiveness of a System of Internal Control)
  • フレームワークを適用する際に役立つテンプレートおよびシナリオの提示
  1. 外部財務報告に係る内部統制:適用方法および適用事例の解説(Internal Control over External Financial Reporting : A Compendium of Approaches and Examples)
  • 内部統制の構成要素および原則が、財務諸表作成過程においてどのように適用され得るかを示す、実務的なアプローチと例示を提供

NEXT:「COSOフレームワーク改訂の目的および改訂内容の解説」





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(3)改訂の目的


新COSOフレームワークでは、過去20年間におけるビジネス・業務環境の変化※3やステークホルダーの内部統制システムへの関心の高まりに対応するための改良が図られている。


改訂対象のフレームワーク



2. COSO 内部統制の統合的フレームワークの改訂内容


(1)基本概念


旧COSOフレームワークにおける基本概念は踏襲されており、基本的に以下の項目について変更点はない。


  1. 内部統制に関する基本的な定義
  2. 内部統制の3つの目的と5つの構成要素
  3. 5つの構成要素それぞれが有効な内部統制の要件であること
  4. 内部統制の整備、導入および運用ならびにその有効性の評価における判断の重要性


(2)主要な改訂ポイント


旧COSOフレームワークからの基本概念は踏襲しつつも、近年のビジネス環境の変化への対応、より包括的なガイダンス・事例の提供による利便性の向上を図るための変更が行われている。


改訂項目概要
原則主義の採用
  • 内部統制の構成要素に関連する基本概念として17原則(Principles)を示し、さらに各原則に対する着眼点(Points of Focus)計87個を提示
  • 過度の細則主義に陥ることなく、効果的な内部統制を弾力的に実現するための判断材料としている
報告目的の拡大
  • 内部統制の目的の一つであった「財務報告の信頼性」を「報告目的」に変更し、近年重要性が高まっている非財務報告も対象に追加
  • さらに信頼性だけでなく、適時性・透明性等の観点も重視
その他の変更点
  • ガバナンスに関する論点の強調(cf.原則2)
  • 不正防止に関する論点の強調(cf.原則8)
  • モニタリング機関としての内部監査機能の強調
  • 業務遂行能力と説明責任に対する期待の反映
  • 内部統制の目的設定の明確化
  • テクノロジーとの関連性を反映
  • グローバル化、多様なビジネスモデルと組織構造の考慮

① 新COSOフレームワークでは、従来からの内部統制に関する定義や評価方法について変更することは意図されていない。むしろ、より包括的で概念的なガイダンスと実務上の事例を提供することに重点が置かれている。まず旧COSOフレームワークの実務適用において見られた細則主義への反省から、原則主義的考え方を採用し、5つの構成要素に関連する基礎的な概念として17の「原則(Principles)」を提示し、さらに各原則のより正確な理解のために87個の「着眼点(Points of Focus)」を設けている。これらにより、効果的な内部統制を効率的に整備・運用するための判断指標とするとともに、新COSOフレームワークを適用する上での弾力性と判断の余地を与えるものとしている。
② 内部統制の目的の一つであった「財務報告の信頼性」が、より広く「報告目的」に変更されている。これにより、その報告対象に内部報告および非財務報告を含むこと、また信頼性だけでなく適時性・透明性の観点も重視され、内部統制の所有者は経営者にあるというガバナンスの視点がより強調されている。この点については、内部統制の定義の中で「Board of Directors」(取締役会)という用語が使用されており、ガバナンス機関(governing body)を総称する用語である旨がエグゼクティブ・サマリーの中で記されている。
③ 新COSOフレームワークでは内部監査機能をより重視し、3つのディフェンスラインを明示するとともに、モニタリング機能を担う内部監査について多くの記述がなされている。またこれまで必ずしも明示的に示されていなかった不正防止の観点も加えられ、「不正のトライアングル」によるアプローチが示され、17原則の一つとして取り上げている。


NEXT:「新COSOフレームワークの概要(定義、対象範囲、適用事例等)」





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(3)内部統制の定義・目的・構成要素


内部統制の定義
  • 内部統制とは、組織の3つの目的の達成に関して合理的な保証を提供するために、事業体の取締役会※4、経営者およびその他の構成員によって遂行されるプロセスである。

【3つの目的】
  1. 業務
  2. 業務の有効性と効率性に関連
  1. 報告
  2. 内部・外部と財務・非財務報告に関連
  1. コンプライアンス
  2. 法律・規則の遵守に関連
【5つの構成要素】
  1. 統制環境
  2. リスク評価
  3. 統制活動
  4. 情報と伝達
  5. モニタリング活動
cosoキューブ

※4. 取締役会「Board of directors」は、各ガバナンス機関(ボード、評議員会、オーナー、監査委員会など)「Govening body」を包含する用語として使用されている。



(4)対象範囲の拡大


内部統制の目的の1つである「財務報告の信頼性」を「報告目的」に変更
  • 財務報告に加えて、「内部報告」も報告対象に追加し、また近年重要性が高まっている非財務項目(“Non Financial Reporting”)も対象に含めている
  • 信頼性以外の適時性、透明性等の観点も重視(“reporting objective beyond just reliability”)



(5)原則主義的な考え方:5つの構成要素と17の原則


効果的な内部統制を実現するための判断指標として17の原則を提示
  • これらの原則は、新たな考え方を提示したものではなく、旧COSOフレームワークで示された5つの構成要素に対する基本的考え方を具体的に列挙したものとされている



(6)着眼点と適用事例


ICEFRガイダンス」(外部向け財務報告アプローチと実例の要約)- Internal Control over External Financial Reporting : A Compendium of Approaches and Examples
  • 「ICEFRガイダンス」はフレームワークに付随する資料であり、フレームワークで設定された原則を、外部向け財務報告にどのように適用するかを、アプローチや適用事例を用いて説明している。


以上