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【会計情報トピックス】JICPA、「開示・監査制度の在り方に関する提言‐会社法と金融商品取引法における開示・監査制度の一元化に向けての考察‐」を公表


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日本公認会計士協会(JICPA)は、2015年11月13日、「開示・監査制度の在り方に関する提言‐会社法と金融商品取引法における開示・監査制度の一元化に向けての考察‐」(以下、「本提言」という)を公表しました。


本年6月に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2015 では、「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進」として、会社法、金融商品取引法(以下、「金商法」という)、証券取引所上場規則に基づく開示を検証し、統合的な開示の在り方について検討を行い、今年度中に結論を得るものとされています。このような動きを背景に、JICPAでは、有価証券報告書と計算書類の実質的一元化、会社法と金商法の監査制度の一元化についてのこれまでの検討結果を集約し、今般本提言として公表に至ったものです。


サマリー
  • 会社法と金商法の法定開示における財務情報は一元化し、監査も実質的に一元化すべきである。
  • 各上場会社が、1か月程度の議案検討期間を確保したスケジュールで情報開示を含む株主総会関連日程を設定すべきである。
  • 定時株主総会開催日は、従来の決算日後3か月以内の開催には拘らず、3か月を超える日程での開催も当然のこととする柔軟な対応により、株主総会の分散化を図るべきである。


法定開示における財務情報の一元化および監査の実質的一元化


現在わが国では、会社法監査報告書が決算短信の公表前に発行されている会社が上場会社全体の約4割を占めており、早期開示による速報性に意味のある決算短信に、確報値に求められる信頼性まで求める実態があると、本提言の中では指摘しています。


このため、わが国では、信頼性を担保すべき開示書類の作成期間、監査期間が十分に確保されていないとの認識のもと、会社法計算書類の作成および監査報告書の発行を現在よりも後ろ倒しする方向で、金商法に基づく有価証券報告書および監査報告書と同時期に開示すべきであるとする考えが示されています。また、開示すべき情報および監査について一元化し、重複業務を排除するとともに、必要な情報を分かりやすい形で提供すべきであるとの見解が示されています。


一元化の具体的方法としては、より詳細な開示内容を含む金商法の開示をベースとして、単一の開示内容で有価証券報告書を作成し、単体開示については関連当事者注記等の会社法固有の開示項目について整理することで、開示される財務情報を会社法上の計算書類としても用いることができるよう法令改正を行うことを提言しています。


このような一元化に伴い、現状40 日もの乖離が生じている会社法と金商法の監査報告書の日付が同一のものとなれば、後発事象の問題も克服され、実質的な監査の一元化にもつながることで、監査人や会社の作業負担も軽減されるとしています。



あるべき情報開示および株主総会関連のスケジュール


本年6月1日から適用が開始されたコーポレートガバナンス・コードでは、最初の原則である「基本原則1」において、「株主の権利・平等性の確保」についての原則が示されています。これを受け、本提言では、上場会社は、株主総会が株主との建設的な対話の場であることを認識し、①株主総会において株主が適切な判断を行うことに資する十分な情報提供を行うとともに、②情報の正確性を担保した上での十分な議案検討期間を確保し、③株主との建設的な対話の充実やそのための正確な情報提供等を考慮した株主総会関連日程の適切な設定を行うことが必要であるとの考えが示されています。


また経済産業省「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」(本年4月公表)での議論も踏まえ、株主の視点からは、招集通知期間を少なくとも1か月程度は確保することが期待されていると指摘しています(現状は、東証一部上場企業で平均19 日程度)。


以上を踏まえ、本提言では、①各社が、1か月程度の議案検討期間を確保したスケジュールで情報開示を含む株主総会関連日程を設定すべきであること、また②定時株主総会開催日の設定に当たっては、決算日後3か月を超える日程での開催も当然のこととする柔軟な対応をすべきであること、そして③各社が、無理のない現実的なスケジュールを設定することにより、株主総会の分散化を図っていくことが有益であるとの提言を行っています。具体的には、あるべき株主総会スケジュールとして、1か月間の検討期間を確保することを前提に、7月上旬から7月下旬での開催案を提示しています。


以上



関連リンク:
日本再興戦略改訂2015
東証、「コーポレートガバナンス・コード」を公表


外部リンク:
JICPA「開示・監査制度の在り方に関する提言-会社法と金融商品取引法における開示・監査制度の一元化に向けての考察-」