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【会計情報トピックス】ASBJ、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」を公表


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1. はじめに


企業会計基準委員会(ASBJ)は、2015年5月26日、企業会計基準適用指針公開草案第54号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(以下、「本公開草案」という)を公表した。

本公開草案は、日本公認会計士協会(JICPA)による監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下、「委員会報告第66号」という)等において定められている繰延税金資産の回収可能性に関する指針について、基本的にその内容を引継いだ上で、一部見直しが必要と考えられる点について検討が重ねられたものである。その結果、委員会報告第66号における5つの企業分類の要件の一部や将来の課税所得の合理的な見積可能期間、スケジューリング不能な将来減算一時差異の取扱い等について見直しが提案されている。本稿では、本公開草案の概要について解説する。



2.経緯と本公開草案の目的


(1)経緯

現行の我が国における税効果会計に関する会計基準としては、1998年10月に企業会計審議会から公表された「税効果会計に係る会計基準」(以下、「税効果会計基準」という)の他、JICPAからも、税効果会計基準を受ける形で、税効果会計に関する会計上の実務指針および監査上の実務指針が公表されている。税効果会計に関するこれまでの会計実務は、実質的にはこれらの実務指針に基づいて行われてきたが、ASBJでは、基準諮問会議の提言を受けて、2014年2月より、JICPAにおけるこれらの会計上の実務指針および監査上の実務指針(会計処理に関する部分)について、ASBJに移管すべく審議を重ねてきた。その結果、当該審議の過程において、委員会報告第66号に関する問題意識が特に強く聞かれたことから、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針を先行して開発することとなり、今般の公表に至ったものである。


(2)本公開草案の目的

本公開草案は、繰延税金資産の回収可能性について、税効果会計基準を適用する際の指針を定めることを目的としている。本公開草案において、具体的に移管の対象となった実務指針等は以下のとおりである。

・  会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」※1・  会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」※1・  会計制度委員会「税効果会計に関するQ&A」※1・  監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」※2・  監査委員会報告第70号「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」※2


※1 移管の対象は、これらの実務指針等のうち繰延税金資産の回収可能性に関する定めである。※2 移管の対象は、これらの監査委員会報告のうち会計処理に関する部分である。



3. 本公開草案の概要と改正内容


(1)本公開草案の概要

本公開草案は、現行の委員会報告第66号等における基本的な内容を引継いでいる。すなわち、繰延税金資産の回収可能性は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得※3の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性等に基づいて将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかを判断すること、またその判断をする際には、企業を一定の要件に従って5つに分類し、各分類に応じて回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定することにしている。このように、本公開草案では、委員会報告第66号における5つの企業分類に応じて繰延税金資産の計上額を見積るという枠組みは基本的に踏襲しつつ、各分類の要件およびその具体的な取扱いの一部については、必要な見直しを行っている。

なお、審議の過程では、詳細なガイダンスのないIFRSの任意適用が浸透しつつある最近の状況等も踏まえて、委員会報告第66号における企業分類に応じた取扱いを撤廃すべきであるとの意見も出たものの、当該取扱いが広く定着していることを考慮すると、撤廃した場合には実務への影響が大きいと判断され、その基本的な枠組みを引継いだ上で、必要な見直しを加えることとされた。


※3 現行の実務指針では、「課税所得」という用語が、当期末に存在する一時差異を加算・減算する前の金額として使用されている場合と加算・減算した後の金額として使用されている場合が混在していた。そこで本公開草案では、将来において当期末に存在する将来減算一時差異を解消するために必要な課税所得が生じるかどうかを判断するための将来要件として、「一時差異等加減算前課税所得」(将来の事業年度における課税所得の見積額から、当該事業年度において解消することが見込まれる当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の額(および該当する場合は、当該事業年度において控除することが見込まれる当期末に存在する税務上の繰越欠損金の額)を除いた額)という用語を新たに定義している(本公開草案第3項(9))。


(2)改正内容

以下では、本公開草案の内容に関して、主に委員会報告第66号との比較を中心に、変更点等見直しをされた項目について解説する。

【企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い】

委員会報告第66号では、繰延税金資産の回収可能性を判断する際に、過去の事象を主たる判断基準としていたが、本公開草案では、当該記載を引継がず、過去の課税所得および将来の業績予測等を考慮する定めを設けている。

<本公開草案><委員会報告第66号>
  • 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断する際に、(分類1)から(分類5)に係る要件に基づき企業を分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定する。
【第15項参照】
  • (分類1)から(分類5)に示された要件をいずれも満たさない企業は、過去の課税所得または税務上の欠損金の推移、当期の課税所得または税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する。
【第16項参照】
  • 将来年度の会社の収益力を客観的に判断することは実務上困難な場合が多い。そこで会社の過去の業績等の状況を主たる判断基準として、将来年度の課税所得の見積額による繰延税金資産の回収可能性を判断する場合の指針を示す。
  • 過去の業績等に基づいて、将来年度の課税所得の見積額による繰延税金資産の回収可能性を判断する指針としては、以下の例示区分に応じた取扱いによるものとする。ただし、それぞれの例示区分に直接該当しない場合であっても、それぞれの例示区分の趣旨を斟酌し、会社の実態に応じて、それぞれの例示区分に準じた判断を行う必要がある。



@NEXT@

【分類1】

委員会報告第66号の(分類1)「期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上している会社等」については、実質的な変更点はない。

<本公開草案><委員会報告第66号>




次の要件をいずれも満たす企業。
  • 過去(3 年)および当期のすべての事業年度において、期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じている。
  • 当期末において、経営環境に著しい変化がない。
【第17項参照】
以下のいずれも満たすような会社は、将来においても一定水準の課税所得を発生させることが可能であると予測できる。
  • 期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期(当期およびおおむね過去3 年以上)計上している。
  • 経営環境に著しい変化がない。









  • 繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。
  • スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産についても回収可能性があるものとする。
【第18項参照】
  • 一般的に、繰延税金資産の全額について回収可能性があると判断できる。
  • スケジューリングが不能な将来減算一時差異についても、将来スケジューリングが可能となった時点で課税所得が発生する蓋然性が高いため、回収可能性があると判断できる。


【分類2】

委員会報告第66号の(分類2)「業績は安定しているが、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社等」については、現行の定めを基本的に踏襲した上で、いくつかの変更を加えている。
① 委員会報告第66号の「経常的な利益」という会計上の利益に基づく要件から、課税所得に基づく要件に変更している。これは受取配当金の益金不算入のように永久に益金または損金に算入されない項目が生じることなどにより、会計上の利益と課税所得は通常一致しないため、企業分類における重視すべき要件としては課税所得がより適切であるとの考えに基づいている。加えて、課税所得からは「臨時的な原因により生じたもの※4」を除くことにしている。これは過去において臨時的な原因により生じた益金または損金は、将来において頻繁に生じることは見込まれないという推定に基づいている。② 臨時的な原因により重要な税務上の欠損金が生じた場合を想定し、(分類4)に係る要件と重複しないことを明確にするため、重要な税務上の欠損金が生じていないことを要件として追加している。③ 将来の事象を勘案する観点から、当期末において経営環境に著しい変化がないことも要件として追加している。④ 一定の要件を満たしたスケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとされた。これは、(分類2)の企業においては、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は一律に計上できないとする現行の取扱いが、企業の実態を反映しない場合がある等の意見を反映したものとされている。


※4 企業が置かれた状況などに基づいて検討した場合に、将来において頻繁に生じることが見込まれないものは、「臨時的な要因により生じたもの」に該当するとしている。


<本公開草案><委員会報告第66号>




次の要件をいずれも満たす企業。
  • 過去(3 年)および当期のすべての事業年度において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が、期末における将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じている。
  • 当期末において、経営環境に著しい変化がない。
  • 過去(3 年)および当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。
【第19項参照】
  • 過去の業績が安定している会社等の場合、すなわち当期および過去(おおむね3 年以上)連続してある程度の経常的な利益を計上しているような会社。









  • 一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合は、回収可能性があるものとする。
  • 原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産については、回収可能性がないものとする。
  • ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないものの、将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、将来のいずれかの時点で回収できることを合理的に説明できる場合には、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとする※5
【第20項、21項参照】
  • 一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、回収可能性があると判断できる。

    ※5 例えば、期末時点では売却時期の意思決定等を行っていないものの、市場環境等により将来のいずれかの時点で売却する可能性が高いと見込む政策保有の上場株式について、スケジューリングが可能となった際に相殺できる課税所得が生じる可能性があることを合理的に説明できる場合には、一定の回収可能性を認め得るとしている。



    【分類3】

    委員会報告第66号の(分類3)「業績が不安定であり、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社等」については、現行の定めを基本的に踏襲した上で、必要な見直しを行っている。① (分類2)の要件と同様に、「経常的な損益」という会計上の利益に基づく要件から、課税所得に基づく要件に変更している。課税所得から「臨時的な原因により生じたもの」を除く点も同様である。② (分類2)の要件と同様に、(分類4)に係る要件と重複しないことを明確にするため、重要な税務上の欠損金が生じていないことを要件として追加している。③ 「おおむね5年」とされている将来の合理的な見積可能期間について、必要な見直しを行っている。これは、現行実務において、「おおむね5年」とする取扱いが定着している一方、事実上は5年を上限として適用されていることを踏まえ、一律に5年を上限とすることは、企業実態を反映しない可能性があるとの考えに基づいている。

    <本公開草案><委員会報告第66号>




    次の要件をいずれも満たす企業(ただし、本公開草案第26項(2)または(3)の要件を満たす場合を除く)。
    • 過去(3 年)および当期において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している。
    • 過去(3 年)および当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。
    【第22項参照】
    • 過去の業績が不安定な会社等の場合、すなわち過去の経常的な損益が大きく増減しているような会社。









    • 将来の合理的な見積可能期間(おおむね5 年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、当該見積可能期間の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合には、回収可能性があるものとする。
    • 上記にかかわらず、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3 年)および当期の課税所得の推移等を勘案して、5 年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする※6
    【第23項、24項参照】
    • 将来の合理的な見積可能期間(おおむね5 年)内の課税所得の見積額を限度として、当該期間内の一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、回収可能性があると判断できる。

    ※6 例えば、製品の特性により需要の変動が長期にわたり予測できるため、当該需要の変動の推移に基づいて課税所得が大きく増減している原因を合理的に説明できる場合や長期契約が新たに締結されたことにより、長期的かつ安定的に収益が計上されることが明確になる場合などを想定している。




    @NEXT@

    【分類4】

    委員会報告第66号の(分類4)「重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社等」については、現行の定めを基本的に踏襲した上で、必要な見直しを行っている。① 委員会報告第66号では、期末における重要な税務上の繰越欠損金の存在を分類の要件としていたが、本公開草案では、過去(3年)または当期において重要な税務上の欠損金が生じているかどうかに焦点を当てた要件とすることに変更している。また将来の事象を勘案する観点から、翌期において一時差異等加減算前課税所得が生じることが見込まれることを要件として追加している。② 委員会報告第66号では、いわゆる「4号但し書き」に該当する企業においては、(分類3)として取扱い、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5 年)内の課税所得の見積額を限度として、当該期間内の一時差異等のスケジューリングの結果に基づき繰延税金資産を計上できるものと定められている。本公開草案では、当該取扱いについて一部見直しを加え、一定の要件を満たす場合には、状況に応じて、(分類2)または(分類3)に該当するものとする取扱いを設けている。

    <本公開草案><委員会報告第66号>




    以下のいずれかの要件を満たし、かつ、翌期において一時差異等加減算前課税所得が生じることが見込まれる企業。
    • 過去(3 年)または当期において、重要な税務上の欠損金が生じている。
    • 過去(3 年)において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実がある。
    • 当期末において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる。
    【第26項参照】
    以下のいずれかに該当する会社。
    • 期末において重要な税務上の繰越欠損金が存在する。
    • 過去(おおむね3 年以内)に重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実がある。
    • 当期末において重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる。
    • 過去の経常的な利益水準を大きく上回る将来減算一時差異が期末に存在し、翌期末において重要な税務上の繰越欠損金の発生が見込まれる。









    • 翌期の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、翌期の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合には、回収可能性があるものとする。
    【第27項参照】
    • 原則として、翌期に課税所得の発生が確実に見込まれる場合で、かつ、その範囲内で翌期の一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、回収可能性があると判断できる。







    • 重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)および当期の課税所得または税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得の十分性が合理的に説明できる場合※7
      • 将来において5 年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できるときは(分類2)に該当するものとして取り扱う※8
      • 将来においておおむね3 年から5 年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることが合理的に説明できるときは(分類3)に該当するものとして取り扱う※9
    【第28項、29項参照】
    • 重要な税務上の繰越欠損金や過去の経常的な利益水準を大きく上回る将来減算一時差異が、例えば、事業のリストラクチャリングや法令等の改正などによる非経常的な特別の原因により発生したものであり、それを除けば課税所得を毎期計上している場合
      • 将来の合理的な見積可能期間(おおむね5 年)内の課税所得の見積額を限度として、当該期間内の一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、回収可能性があるものと判断できる。

    ※7 例えば、過去(3 年)において重要な税務上の欠損金が生じたことから(分類4)の要件を満たすものの、その後、課税所得が生じたことにより、期末において税務上の繰越欠損金が存在しないことが見込まれる場合などが想定されている。※8 例えば、過去において(分類2)に該当していた企業が、当期において、災害損失により重要な税務上の欠損金が生じる見込みであることから(分類4)の要件に該当するものの、将来において5 年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できる場合などが想定されている。※9 例えば、過去の業績悪化に伴い、重要な税務上の欠損金が生じていた企業が、当期に代替的な原材料が開発されたことにより業績の回復が見込まれる状況等において、将来においておおむね3 年から5 年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることが合理的に説明できる場合などが想定されている。



    【分類5】

    委員会報告第66号の(分類5)「過去連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社等」については、現行の定めを基本的に踏襲した上で、必要な見直しを行っている。① 将来の事象を勘案する観点から、翌期においても重要な税務上の欠損金が生じることが見込まれることを要件の1 つとして追加している。② 委員会報告第66 号で(分類5)の要件とされていた「債務超過の状況にある会社や資本の欠損の状況が長期にわたっている会社で、かつ、短期間に当該状況の解消が見込まれない場合」について、本公開草案では、企業分類に一貫性を持たせる観点から、(分類5)の要件から削除している。

    <本公開草案><委員会報告第66号>




    以下の要件をいずれも満たす企業。
    • 過去(3 年)および当期のすべての事業年度において、重要な税務上の欠損金が生じている。
    • 翌期においても重要な税務上の欠損金が生じることが見込まれる。
    【第30項参照】
    以下のいずれかに該当する会社。
    • 過去(おおむね3 年以上)連続して重要な税務上の欠損金を計上し、かつ、当期も重要な税務上の欠損金の計上が見込まれる。
    • 債務超過の状況にある。
    • 資本の欠損の状況が長期にわたり、かつ、短期間に当該状況の解消が見込まれない。









    • 原則として、繰延税金資産の回収可能性はないものとする。
    【第31項参照】
    • 原則として、繰延税金資産の回収可能性はないものと判断する。


    4.適用時期等について


    (1)適用時期

    2016年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することとされている。ただし、早期適用も認められ、2016年3月31日以後終了する連結会計年度および事業年度の年度末に係る連結財務諸表および個別財務諸表から適用することができるものとされている(第49項(1)参照)。


    (2)適用初年度の取扱い

    ① 本公開草案の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取扱う(第49項(3)参照)。② 本公開草案を適用するに当たっては、遡及適用は認めないこととし、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下、「企業会計基準第24号」という)第6項(1)に定める特定の経過的な取扱いとして、適用初年度の期首時点で新たな会計方針を適用した場合の繰延税金資産・繰延税金負債の額と前年度末の繰延税金資産・繰延税金負債の額との差額を、適用初年度の期首の利益剰余金等に加減することとしている(第49項(4)参照)。会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の場合、遡及適用が原則的な取扱いとなるが、遡及適用を求めないのは、過去の時点における判断に本公開草案を遡及適用した場合、当該時点で入手可能であった情報と事後的に入手した情報を客観的に区別することが困難であること等、実務への影響を考慮したためである。③ 適用初年度における会計方針の変更による影響額の注記については、企業会計基準第24 号第10 項(5)ただし書きの定め※10にかかわらず、適用初年度の期首の繰延税金資産に対する影響額、利益剰余金に対する影響額、およびその他の包括利益累計額または評価・換算差額等に対する影響額のみを求めることとしている(第49項(5)参照)。これは、本公開草案の適用による影響を特定することが困難であるとの意見を考慮したためとされている。④ 本公開草案では、注記事項の追加に関する提案は行われていない。開示に関する定めを設けるには、文案の検討も含め、今後、相当程度の時間を要する可能性があること、またその決定にあたっては、他の実務指針における検討も含めた全体的な便益およびコストを考慮する必要があることが理由として挙げられている。


    ※10 企業会計基準第24 号第10項(5)ただし書きによれば、経過的な取扱いに従って会計処理を行った場合等で、遡及適用を行っていないときには、「表示期間の各該当期間において、実務上算定が可能な、影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額及び1 株当たり情報に対する影響額」を注記することとしている。



    5.今後の予定


    本公開草案に対するコメント募集期限は、2015年7月27日である。なお、JICPAにおける税効果会計に関する会計上の実務指針および監査上の実務指針(会計処理に関する部分)のうち、本公開草案に含まれていないものの審議については、本公開草案の公表後、可能な限り早急に着手する予定とされている。また、その審議の際に、税効果会計に関する注記事項の見直しも行い、その検討には繰延税金資産の回収可能性に関する注記事項も含めることとされている。



    外部リンク:企業会計基準適用指針公開草案第54号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」の公表