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【会計情報トピックス】新規上場後3年間、内部統制監査免除へ


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2014年5月に成立・公布した「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第44号:1年以内施行)に係る政令・内閣府令等が2015年5月15日に公布され、本年5月29日から施行される(一部は公布日に施行)。この改正は、2013年12月に公表された報告書「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」を受けて、(1)新規・成長企業へのリスクマネー供給促進等、(2)新規上場の促進や資金調達の円滑化等、(3)市場の信頼性確保を目的として関連法制の整備を図ったものである。


上記目的(2)に関連して、今回の改正により、新規上場後3年間は、内部統制報告書に関わる監査義務が免除されることになった(金商法第193条の2第2項第4号)。ただし、内部統制報告書の提出自体は必要である。内部統制報告書に係る監査証明が免除される期間の起算日は、「金融商品取引所に上場されている有価証券等の発行者に初めて該当することとなった日(その日が当該発行者の事業年度開始後3月以内の日である場合には、その事業年度開始後3月を経過した日)」とされた(金融商品取引法施行令第35条の3)。また新規上場企業であっても、免除規定の対象外となっていた「企業規模が大きく、市場や社会的・経済的影響力が大きいと考えられる企業」は、具体的に「資本金100億円以上又は負債総額1,000億円以上」と定められた(財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令第10条の2)。



【コメント】
今回の改正理由としては、①新規上場を躊躇させる要因の一つとして、内部統制報告書に係る負担が重いとの指摘があること、②新規上場企業は、上場前に金融商品取引所から厳格な審査を受けていること、③新規上場企業は、財務負担能力が相対的に低いことなどが背景として挙げられている。今回の免除規定により、新規上場時の負担軽減、特に財務面でのコスト抑制につながることは間違いない。ただし、内部統制報告の提出自体は求められており、上場企業として企業規模・実態に即した適切な内部統制システムの整備・運用が必要であることに変わりはない。その意味で、実質的な実務への影響という面では、従来とそれほど変わらないものと思われる。むしろ、形式に走ることなく、合理的で実効性あるルールの整備と運用体制の構築につながることを期待したい。



関連リンク:
金商法の改正により、新規上場後3年間、内部統制監査免除へ


金融庁ウェブサイト:
平成26年金融商品取引法等改正(1年以内施行)等に係る政令・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等について