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IASB、「金利指標改革 – フェーズ2(IFRS第9号、IAS第39号、IFRS第7号、IFRS第4号及びIFRS第16号の改訂)」を公表

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国際会計基準審議会(IASB)は、2020年8月27日、「金利指標改革-フェーズ2(IFRS第9号、IAS第39号、IFRS第7号、IFRS第4号及びIFRS第16号の改訂)」(以下、「本改訂」という)を公表しました。

 

本改訂は、銀行間金利(IBOR)および他の金利指標の継続的な改革への対応を最終化し、IFRSの修正パッケージとして公表されたものです。

 

本改訂は2021年1月1日以後開始する事業年度に適用され、早期適用が認められます。

 

 

背景

 

IASBは、金利指標改革が財務報告に影響を与える論点を以下の2つのフェーズに分けて検討しています。

 

フェーズ1:既存の金利指標を代替的な金利指標に置換える前の期間に生じる影響

フェーズ2:既存の金利指標を代替的な金利指標に置換える時に生じる影響

 

フェーズ1(金利指標の置換え前に生じる前の期間)の論点については、2019年9月に公表された「金利指標改革(IFRS第9号、IAS第39号及びIFRS第7号の改訂)」にて対応しています。

 

本改訂は、フェーズ2に対応するものであり、2019年に公表された修正を補完し、金利指標改革に伴い、古い金利指標を代替的な指標金利に置き換える際の財務諸表への影響に焦点を当てています。

 

 

概要

 

本改訂は、主として①契約上のキャッシュ・フローの変更、②ヘッジ会計に関する救済措置、③開示の3点に関連しています。

 

 

契約上のキャッシュ・フローの変更

 

 

Liborなどの金利指標の変更は、通常、契約条件の内容を実質的に大きく変更するものではなく、IFRS第9号「金融商品」では、「既存の金融商品の認識の中止を伴わない条件変更」として会計処理されます。この場合、変更後の将来キャッシュ・フローを変更前の実効金利で割り引いた現在価値と帳簿価額の差額を条件変更差額として純損益に認識することが要求されています。しかし、金利指標改革によって生じた金利指標の変更に現行の会計処理をそのまま適用することは、有用な財務情報を提供しないと考えられます。

 

本改訂では、実務上の便法として、以下の2つの要件を同時に満たす場合には、純損益として認識せず、変動金利の金利リセット時と同様の方法(IFRS9.B5.4.5)を適用して会計処理することとしています。

 

  1. 契約上のキャッシュ・フローの算定の基礎が、金利指標改革の直接の結果として必然的に変化
  2. 新しい契約上のキャッシュ・フローの算定の基礎が、変更前の基礎と経済的に同等

 

 

ヘッジ会計

 

 

ヘッジ文書の変更

 

IFRS上、ヘッジ文書の変更は原則としてヘッジ会計の中止に該当します。しかし、金利指標改革を直接の要因とする金利指標の変更によりヘッジ会計の中止が要求される場合には、財務諸表利用者にとって有用な情報とならないと考えられます。

 

本改訂では、金利指標の置換えに伴うヘッジ文書の変更は、ヘッジ会計の中止と再指定には該当しないとされています。この点に関しては、以下の明確化が行われています(IFRS9.6.9.1, 6.9.4, BC6.613)。

 

  • 「ヘッジ対象の記載」の変更には、キャッシュ・フローまたは公正価値のうちヘッジ指定されている一部分を変更する場合が含まれること。
  • ヘッジ文書の変更は、金利指標改革により要求されるものであること。
  • ヘッジ文書の変更は、参照される金利指標が変化した期の期末までに行う必要があること。

 

会計処理

 

キャッシュ・フロー・ヘッジを適用している場合、ヘッジ文書を変更し、ヘッジ対象の記載内容を変更した時点におけるキャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金の残高については、変更後の金利指標に基づいて算定された値とみなすとされています。

 

項目グループのヘッジ

 

複数の項目をヘッジ対象とする項目グループのヘッジについて、個々の項目で参照されている金利指標が異なるタイミングで新たな金利指標に変化する場合には、項目グループとしてのヘッジ対象の適格性要件を満たせなくなり、ヘッジ会計が中止となることも考えられます。

 

本改訂では、従来の金利指標を参照するサブ・グループと新たな金利指標を参照するサブ・グループにヘッジ対象を分割し、項目グループのヘッジ対象に関する適格性要件(IFRS9.6.6.1)をサブ・グループ毎に適用することとしています。この場合、あるサブ・グループが項目グループのヘッジの要求規定を満たさない場合には、他のサブ・グループを含むグループ全体のヘッジ会計を将来にわたって中止する必要があります。

 

契約上明示されていないリスク要素のヘッジ対象指定

 

リスク要素をヘッジ対象に指定する場合、当該リスク要素は「独立して識別可能」かつ「信頼性をもって測定可能」でなければなりません。しかしながら、新たな金利指標に置き換えられる場合、当該金利市場はまだ十分に発達しておらず、「独立して識別可能」要件を満たさないことが想定されます。そこで、本改訂では、新たな金利指標が契約上明示されていないリスク要素としてヘッジ対象に指定される場合、指定時に「独立して識別可能」要件を満たしていなかったとしても、指定された日から24か月以内に「独立して識別可能」になると合理的に予想している場合には、「独立して識別可能」とみなすとしています。

 

 

開示

 

企業が金利指標改革から生じるリスクに晒されている程度および当該リスクをどのようにリスク管理しているか、また、新たな金利指標への移行の完了度合いおよび当該移行をどのように管理しているか等に関する定性的・定量的情報の開示が要求されます。

 

詳細はIASBウェブサイトをご覧ください。

 

以上

 

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