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【会計情報トピックス】ASBJ、「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」を改正


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企業会計基準委員会(ASBJ)は2015年3月26日、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」の改正(以下、「改正実務対応報告第18号」という)を公表した。



1.改正の経緯


連結財務諸表を作成する場合、同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社および子会社が採用する会計方針は、原則として統一しなければならないとされている。しかし、当面の取扱いとして、在外子会社の財務諸表が国際財務報告基準(IFRS)または米国会計基準に準拠して作成されている場合には、当面の間、それらを連結決算手続上利用することができるものとしている。ただし、その場合であっても、重要性が乏しい場合を除き、連結決算手続上、当期純利益が適切に計上されるよう当該在外子会社の会計処理を修正しなければならないとし、具体的な修正項目として、以下の5つ項目が列挙されている(改正前の実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」、以下「改正前実務対応報告第18号」という)。

① のれんの償却
② 退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理
③ 研究開発費の支出時費用処理
④ 投資不動産の時価評価および固定資産の再評価
⑤ 少数株主損益の会計処理

今般の改正は、2014 年1 月に米国会計基準の改正によって非公開会社がのれんの償却を選択できるようになったこと、また2013 年9 月に改正された企業会計基準第22 号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下、「連結会計基準」という)により当期純利益の表示の変更が行われたことなどを受けて、その取扱いを定めたものである。



2.改正の概要


(1)のれんの償却に関する取扱い

改正前実務対応報告第18号では、在外子会社におけるのれんは、連結決算手続上、その計上後20 年以内の効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却するよう修正するものとされていた。しかし、米国において、2014年1 月にFASB Accounting Standards Codification(FASB による会計基準のコード化体系)のTopic 350「無形資産-のれん及びその他」が改正され、非公開会社はのれんを償却する会計処理を選択できるようになった。これを受けて、改正実務対応報告第18号では、連結決算手続上の修正範囲を明確にするため、のれんを20 年以内の効果の及ぶ期間にわたって償却するよう修正を求めるのは、在外子会社においてのれんを償却していない場合とすることが定められた。

なお、経過措置として、適用初年度の期首に連結財務諸表において計上されているのれんのうち、在外子会社が償却処理を選択したのれんについては、実務上の便宜から、企業結合ごとに以下のいずれかの方法の選択適用を認めている。

① 連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間に基づいて償却する。② 在外子会社が採用する償却期間が連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間を下回る場合は、当該償却期間に変更する。この場合、変更後の償却期間に基づき、将来にわたり償却する。


(2)少数株主損益の会計処理に関する取扱い

改正前実務対応報告第18号では、在外子会社における当期純利益に少数株主損益が含まれている場合には、連結決算手続上、当該少数株主損益を加減し、当期純利益が親会社持分相当額となるよう修正することが求められていた。しかし、2013年9月の連結会計基準の改正に伴い、従来の「少数株主損益調整前当期純利益」は「当期純利益」として表示し、「親会社株主に帰属する当期純利益」を区分して内訳表示または付記することとなった。このため、「少数株主損益の会計処理」に関する取扱いについての国際的な会計基準との差異がなくなったことから、改正実務対応報告第18号では、この修正項目を削除することとしている。


(3)退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理

改正前実務対応報告第18号は、「在外子会社において、退職給付会計における数理計算上の差異(再測定)をその他の包括利益で認識し、費用処理することなく純資産の部に計上している場合には、連結決算手続上、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」に従った、当該金額を平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に処理する方法(発生した期に全額を処理する方法を継続して採用することも含む)により、当期の損益とするよう修正する」としていた。
これに対して、改正実務対応報告第18号では、上記文言のうち、「企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」に従った」の記載を削除する等、退職給付会計に関して修正を行うべき内容は、従来から修正項目としていた部分に限られることを明確化するための文言の修正を行っている。



3. 適用時期等


2015 年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する。ただし、今回の改正により削除された「少数株主損益の会計処理」に関する取扱いを除き、公表後、最初に終了する連結会計年度の期首から早期適用することも認められている。早期適用する場合は、連結会計年度中の第2 四半期連結会計期間以降から適用することができる。なお、その場合であっても、のれんの償却に関する経過措置は、連結会計年度の期首に遡って適用することを要する。



4.今後検討予定の修正項目


IFRS第9号「金融商品」における、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資の公正価値の変動におけるノンリサイクリング処理等を修正項目として追加するか否かについて、今後、検討を行う予定としている。



外部リンク:ASBJ 改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」の公表