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【会計情報トピックス】東証、「コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について」を公表


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はじめに


2015年2月24日、東京証券取引所(以下、「東証」という)は、「コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について」(以下、「本上場制度の整備」という)を公表し、パブリックコメントの募集を開始した(期限2015年3月26日)。
2015年3月5日にコーポレートガバナンス・コード原案(以下、「コード原案」という)が公表されたが、今後、コーポレートガバナンス・コード(以下、「コード」という)の適用(2015年6月1日予定)に向けて、所要の制度整備を行うこととしている。また、独立取締役の円滑な選任に資するため、独立性に関する情報開示についても、併せて見直しを行うとしている。以下、その概要等について紹介する。


ポイント
  • 市場第一部・市場第二部・マザーズ・JASDAQの上場会社がコードを実施しない場合には、その理由を説明する(マザーズ・JASDAQ上場会社については、軽減措置あり)。
  • 「コードを実施するために行う開示」および「コードを実施しない場合の理由の説明」は、コーポレート・ガバナンス報告書に欄を新設して記載する。
  • コーポレート・ガバナンス報告書に関して、2015年6月以後最初に開催される定時株主総会については、準備ができ次第速やかに提出することとし、遅くともその6ヶ月後までに提出する。
  • 独立役員の独立性に関する情報開示を緩和し、現行の「要説明」の類型(いわゆる開示加重要件)を廃止する。
  • 本上場制度の整備は、2015年6月1日を目途に実施する予定。


1.コードの策定に伴う制度整備


(1)「コードを実施しない場合の理由」の説明

・  市場第一部・市場第二部・マザーズ・JASDAQの上場会社がコードを実施しない場合には、その理由を説明する(有価証券上場規程の企業行動規範「遵守すべき事項」として規定)。・  ただし、マザーズ・JASDAQ上場会社については、新興企業向け市場を巡る国際的な動向および我が国の新規産業育成の観点から、コードのうち「基本原則」部分を実施しない場合のみ、その理由を説明するものとされている。この点、コード原案でも記されていた通り、本則市場(市場第一部および市場第二部)以外へのコード適用に当たっては、一定の配慮がなされている。


(2)「コードを実施しない場合の理由」の説明の媒体

・  「コードを実施しない場合の理由の説明」は、コーポレート・ガバナンス報告書(以下、「報告書」という)に欄を新設して記載する。これは、株主・投資家の利便に資するため、上場会社のコーポレート・ガバナンスの状況を網羅的に記載している報告書に情報を集約するためである。・  「コードを実施するために行う開示」についても、同様の趣旨から報告書に別途、欄を新設して記載する(図表1参照)。・  上場会社は、定時株主総会後、遅滞なく報告書を提出するが、2015年6月以後最初に開催される定時株主総会については、準備ができ次第速やかに提出することとし、遅くともその6ヶ月後までに提出するものとしている。例えば3月決算会社で、定時株主総会を6月末に開催した場合、コードに関する部分は12月末まで提出期限を延長する経過措置が取られている。

経過措置スケジュール


図表1 コーポレート・ガバナンス報告で開示が求められる項目一覧

原則項目開示対象
原則1-4政策保有株式
  • 政策保有株式に関する方針
  • 政策保有株式に係る適切な議決権行使を確保するための基準
原則1-7関連当事者間取引
  • 適切な関連当事者間取引を行う場合の手続きの枠組み
原則3-1情報開示の充実
  • 会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
  • コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
  • 取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定する際の方針と手続
  • 取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
  • 取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明
補充原則4-1①取締役会の役割・責務
  • 取締役会による経営陣に対する委任の範囲の概要
原則4-8独立社外取締役の有効な活用
  • 自主的な判断により3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える場合の取組み方針
原則4-9独立社外取締役の独立性判断基準および資質
  • 独立社外取締役の独立性判断基準
補充原則4-11①取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件
  • 取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性および規模に関する考え方(取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示)
補充原則4-11②同上
  • 取締役・監査役が他の上場会社の役員を兼任する場合の兼任状況
補充原則4-11③同上
  • 取締役会全体の実効性についての分析・評価結果の概要
補充原則4-14②取締役・監査役のトレーニング
  • 取締役・監査役に対するトレーニングの方針
原則5-1株主との建設的な対話に関する方針
  • 株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針

2.コードの尊重


上場会社は、東証の「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」を尊重してコーポレート・ガバナンスの充実に取り組むよう努めるものとされているが(有価証券上場規程445条の3)、当該尊重規定は、コードの趣旨・精神の尊重規定に置き換えるとしている。いずれも「OECDコーポレート・ガバナンス原則」を源流としており、またコードは「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」を包含している関係にあるためである。


3.独立役員の独立性に関する情報開示の見直し


現在、独立役員に関する情報開示には、開示加重要件に該当する場合の「要説明」と属性情報に関する「要開示」の2つの類型がある。したがって、例えば、主要な取引先の元業務執行者など過去において上場会社と特定の関係を有するなど、開示加重要件に該当する独立役員については、それでもなお独立性ありと判断した理由の説明が求められてきた。


今回の見直しでは、現行の取扱いを改め、「要説明」の類型(いわゆる開示加重要件)を廃止し、「要開示」(いわゆる属性情報)に開示方法を統一し、上場会社が独立役員を指定する場合には、当該独立役員と上場会社との間の特定の関係の有無およびその概要を開示するものとしている。


これは、すべての独立役員について等しく情報の開示を求めることにより、上場会社が独立性を判断する際における過度に保守的な運用を是正しようとするものである。


独立役員の独立性に関する情報開示の見直し


※1 「過去」とは、過去10年間に限定されない。※2 「出身者」とは、現在を含む直近10年間において業務執行者であった者をいう。


外部リンク:東証、「コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について」を公表