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金融庁は2014年8月20日、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」を公布し、同日施行しました。これにより、新規上場時に開示する財務諸表の年数が短縮されました。また、非上場会社が国際財務報告基準(IFRS)に準拠した財務諸表を有価証券届出書に記載する場合の年数等を定めています。
本改正は、2013年12月25日に金融庁・金融審議会より公表された報告書「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」において公表されていた、新規上場推進のための負担軽減策の一環として実施されたものです。
① 第二部企業情報「主要な経営指標等の推移」
連結については、最近5連結会計年度から最近2連結会計年度へ短縮されました。一方、単体については、引き続き最近5事業年度の開示が求められています。ただし最近2事業年度以外については、会社計算規則の規定に基づき算出した数値を記載できることとしています(開示府令第二号の四様式(記載上の注意)(11)a、b)。 この点に関して、金融庁は、「投資判断上、極めて重要な情報とされている事項が記載されていることを踏まえ、単体のハイライト情報については、最近5事業年度に係る情報を開示すること」、「株式会社である以上、最近5事業年度に係る会社法上の計算書類が既に作成されているものと考えられることから、最近2事業年度より前の事業年度に係るハイライト情報については、会社算規則に基づき算出した数値を記載できる」として、新規上場企業の負担軽減に配慮している旨のコメントを出しています。
② 第三部特別情報
提出会社について、最近5期分の単体財務諸表のうち、第二部(企業情報)に記載したもの以外の財務諸表を記載する旨の規定は削除されました(開示府令第二号の四様式(記載上の注意)(22))。
【改正の概要】
記載項目 | 区分 | 変更点 | |
---|---|---|---|
変更前 | 変更後 | ||
第二部:企業情報 「主要な経営指標等の推移」 | 連結 | 最近5連結会計年度 | 最近2連結会計年度 |
単体 | 最近5事業年度 | 最近5事業年度 ただし、最近2事業年度以外については、会社計算規則に基づいて算出した数値によることができる(※1) | |
第二部:企業情報 「経理の状況」 | 連結 | 最近2連結会計年度 | 年数に変更なし |
単体 | 最近2事業年度 | 年数に変更なし | |
第三部:特別情報 「最近の財務諸表」 | 単体 | 最近5事業年度のうち、第二部に掲げたもの以外のもの | 規定を削除 |
※会社計算規則による数値を記載する場合には、その旨および金融商品取引法第193条の2第1項の規定による監査証明を受けていない旨を欄外に注記する。
IFRSの任意適用の緩和により、非上場会社でもIFRSを適用することが可能となりましたが、非上場会社が初めて提出する有価証券届出書にIFRSに準拠した連結財務諸表を掲げる場合には、最近連結会計年度分のみの記載で足りる旨の改正がなされました(開示府令 第二号の四様式(記載上の注意)(12)~(15))。
改正の背景としては、新規上場会社がIFRSに基づいて作成した連結財務諸表を有価証券届出書に記載する場合、従来は、日本基準に基づく場合よりも準備すべき財務諸表が1期分多くなっていたことが挙げられます。新規上場時の有価証券届出書においては、最近2連結会計年度分の連結財務諸表には比較情報が含まれない旨の規定(連結財務諸表規則附則2項・3項、開示府令第二号様式(記載上の注意)(60))が適用されますが、IFRSに基づいて新規上場を行う場合には、同規定が適用されないことから、結果として比較情報を含む最近2連結会計年度に係る連結財務諸表、すなわち3期分の連結貸借対照表・連結損益計算書等の記載が必要となっていました(詳細は2014年6月6日コラム参照)。
今回の改正の結果、新規上場会社がIFRSに基づいて作成した連結財務諸表を有価証券届出書に記載する場合、監査報告書に比較情報に関する事項を記載することにより(以下3.にて説明)、比較情報を含む最近連結会計年度分の財務諸表、すなわち2期分の連結貸借対照表・連結損益計算書等の記載のみで足りることとなり、日本基準による場合との平仄を合わせたことになります。
なお、有価証券届出書にIFRSに準拠した連結財務諸表を掲げる場合、日本基準による要約連結財務諸表の記載は不要となっています(開示府令第二号様式(記載上の注意)(30)d )。
非上場会社が初めて提出する有価証券届出書に記載の連結財務諸表に関して、比較情報に係る監査報告上の意見表明方法について、新たな規定が設けられました(監査証明府令第4条第2項)。
すなわち、新規上場会社が指定国際会計基準または米国会計基準に準拠して作成した連結財務諸表を有価証券届出書に記載する場合には、比較財務諸表方式による監査意見の表明が認められることとなりました。これにより、直前期と比較情報としての直前々期の2期分の監査意見を、一つの監査報告書において表明することが可能となっています(※2)。この場合には、前項2.の説明にある通り、比較情報を含む最近連結会計年度分の財務諸表の記載のみで足りることになります。
※2.なお、現行の日本基準の場合は対応数値方式、すなわち監査意見は当年度の財務諸表に対してのみ表明される。 外部リンク:金融庁ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/news/26/sonota/20140820-1.html
改正後の規定は、公布の日から施行され、同日適用されます。
ただし、企業結合会計基準等の改正に伴い、企業内容等の開示に関する内閣府令の「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」とするなどの所要の改正については、2015 年4 月1 日からの施行となります。