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【会計情報トピックス】金商法の改正により、新規上場後3年間、内部統制監査免除へ


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5月23日、第186回通常国会に提出されていた「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第44号)が成立し、5月30日公布されました。施行日については、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定められることになっています。本改正は、2013年12月25日に金融庁・金融審議会より公表された報告書「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」(以下、報告書という。)を受けて、国会に提出されていたものです。改正のポイントを【金商法等改正のポイント】にまとめています。

今回の改正により、新規上場後3年間は、内部統制報告書に関わる監査義務を免除されることとなりました(金商法第193条の2第2項第4号)。ただし、内部統制報告書の提出自体は必要です。また新規上場企業であっても、企業規模が大きく、市場や社会的・経済的影響力が大きいと考えられる企業は、免除の対象外となっています。

改正の理由・背景としては、①新規上場を躊躇させる要因の一つとして、内部統制報告書に係る負担が重いとの指摘があること、②新規上場企業は、上場前に、金融商品取引所から、内部管理体制を含めた厳格な上場審査を受けていること、③新規上場企業は、既存の上場企業に比して、財務負担能力が相対的に低い場合が多いと考えられること、④最も厳格な内部統制報告制度で知られる米国においても、新規上場を促進する観点から、新興成長企業について、内部統制監査を免除する措置が講じられていること、などが指摘されていました。

※ 具体的な基準は、内閣府令で定められることになっているが、「資本金100億円以上又は負債総額1,000億円以上」が想定されている(金融庁説明資料より)。


【金商法等改正のポイント】

Ⅰ.新規・成長企業へのリスクマネー供給促進等 1.投資型クラウドファンディングの利用促進 ■ 少額の投資型クラウドファンディングを扱う金融商品取引業者の参入要件の緩和 ■ 投資勧誘において詐欺的行為等が行われることを排除するための行為規制の導入 2.新たな非上場株式の取引制度 ■ 非上場株式の取引・換金ニーズに応える新たな取引制度を設けるに当たり、限定された投資家間での流通に留めることから、インサイダー取引規制は適用対象外とするなど、非上場企業の負担を大幅に軽減


II.新規上場の促進や資金調達の円滑化等 1.新規上場に伴う負担の軽減 ■ 新規上場後3年間に限り、原則として内部統制監査を免除 2.上場企業の資金調達の円滑化等 ■ 大量保有報告制度の適用対象から自己株式を除外 ■ 流通市場における虚偽の開示書類を提出した企業の損害賠償責任を、無過失責任から過失責任に変更


III.市場の信頼性確保
 1.ファンド販売業者に対する規制の見直し ■ 国内拠点の設置等を義務付けるとともに、ファンドに出資された金銭が目的外に流用されていることを知りながら、その募集の取扱いを行うこと等を禁止 2.金融指標に係る規制の導入 ■ 金融取引の基礎として広範に利用されている特定の金融指標(例えばTIBOR等)について、その算出者を指定し、業務規程の作成・遵守等の義務付けと算出者に対する検査・監督の枠組みを整備


関連リンク:【IPO】新規上場制度をめぐる最近の動向

外部リンク:金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成26年3月14日提出、平成26年5月23日成立)