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非適格株式交換等または非適格株式移転の場合には、非適格株式交換等の直前の時において完全子法人が有する時価評価資産の評価益または評価損は、非適格株式交換等の日の属する事業年度において、益金の額または損金の額に算入されます(法法62条の9第1項)。
ここで、時価評価資産とは、固定資産、土地等、有価証券、金銭債権および繰延資産(一定のものは除かれる)で、含み損益が資本金等の額の2分の1に相当する金額または1,000万円のいずれか少ない金額以上のものをいいます(法令123条の11第1項第4号)。
この場合の「資本金等の額」は、法人のいつの時点の資本金等の額をいうのかについて時価評価資産を有するかどうかの判定を行うことから、その判定時、すなわち、非適格株式交換等の直前の時における資本金等の金額とされています(基通12-2-3-1)。
ただし、非適格株式交換等の直前に完全子法人と完全親法人との間に完全支配関係があった場合には、時価評価の対象から除外されることになります。
組織再編成を利用した租税回避行為の例として、次のようなものが考えられます。
・ 繰越欠損金や含み損のある会社を買収し、その繰越欠損金や含み損を利用するために組織再編成を行う。 ・ 複数の組織再編成を段階的に組み合わせることなどにより、課税を受けることなく、実質的な法人の資産譲渡や株主の株式譲渡を行う。・ 相手先法人の税額控除枠や各種実績率を利用する目的で、組織再編成を行う。・ 株式の譲渡損を計上したり、株式の評価を下げるために、分割等を行う。
これらの租税回避行為を防止するため、包括的租税回避防止規定(法法132条の2)と個別に防止規定が設けられています。
個別の防止規定として、
1. 被合併法人の繰越欠損金の引き継ぎ制限(法法57条第2項、第3項)
2. 合併法人の繰越欠損金の利用制限(法法57条第4項)
3. 特定資産譲渡等損失の損金算入制限(法法62条の7)
4. 特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金繰越の不適用(法法57条の2)
が定められています。
税務調査で否認されるものは、①事実認定によって法令の要件に該当しない、また法令の解釈が相違するとされて否認されるものと、②法令の要件には該当しているものの、不当に法人税を免れるものということで行為又は計算が否認されるものがあると考えられます。
このうち②が行為計算の否認と言われるものであり、組織再編成を利用した租税回避行為については、その行為の形態や方法が相当に多様なものとなると考えられることから、これに適正な課税を行うことができるように包括的な組織再編成に係る租税回避防止規定が設けられています(法法132条の2)。
適格合併の場合において、被合併法人に繰越欠損金(未処理欠損金額)があるときは、その未処理欠損金額を合併法人に引き継ぐことができます(法法57条第2項)が、次に該当する場合には、被合併法人の繰越欠損金の引き継ぎが制限されることになります。
<繰越欠損金の引き継ぎ規定(法法57条第3項)の適用要件>
支配関係がある法人等の合併の場合であって、①みなし共同事業要件を満たす場合、②適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日、または③適格合併の当事者のいずれかの法人の設立の日、から継続して支配関係がある場合のいずれにも該当しない場合に、繰越欠損金の引き継ぎについて制限の対象になります(法法57条第3項)。
<引き継ぎ制限の適用となる欠損金>
引き継ぎの制限の適用となる欠損金には、
① 当該被合併法人等の支配関係事業年度(当該被合併法人等と当該内国法人との間に最後に支配関係があることとなった日の属する事業年度をいう。)前の各事業年度で前9年内の事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額(法法57条第3項一)② 当該被合併法人等の支配関係事業年度以後の各事業年度で前9年内事業年度に該当する事業年度において生じた特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る欠損金額(法法57条第3項二)
があります。
<合併法人の繰越欠損金の利用制限規定(法法57条第4項)の適用要件>
内国法人と当該内国法人の支配関係法人との間で当該内国法人を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人とする適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配が行われた場合(以下、「適格組織再編等」という)であって、その適格組織再編等が「みなし共同事業要件」を満たしておらず、かつ、②適格組織再編等の日の属する事業年度開始の日の5年前の日、または③適格組織再編等の当事者のいずれかの法人の設立の日、から継続して支配関係がない場合に、当該内国法人の繰越欠損金の利用制限の対象となります(法法57条第4項)。
<利用の制限の対象となる欠損金>
利用の制限の対象となる欠損金には、
① 当該内国法人の支配関係事業年度前の各事業年度で前9年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額(法法57条第4項一)② 当該内国法人のの支配関係事業年度以後の各事業年度で前9年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち、特定資産譲渡等損失額相当額からなる部分の金額(法法57条第4項二)
があります。
これは、適格組織再編等により帳簿価額にて資産の移転を受けた法人が、含み損を有する資産の譲渡等により実現した損失(支配関係発生前から再編当事法人が有していた資産の含み損失)について損金算入を認めないとする制度です(法法62条の7第1項、第3項)。
特定資産譲渡等損失の損金算入制限の制度において、①特定資産の範囲、②損金算入制限期間、③損金算入制限される金額について以下のように定められています。
<1.特定資産の範囲>
(1)特定引継資産
合併法人等が被合併法人等から適格合併等により移転を受けた資産のうち、被合併法人等が支配関係発生日前から保有していた資産(法令123条の8第3項)
(2)特定保有資産
合併法人等が支配関係発生日前から保有していた資産(法令123条の8第3項)
(3)特定資産から除外される資産① 棚卸資産(土地等を除く)② 短期売買商品)③ 売買目的有価証券④ 適格合併等の日における帳簿価額又は取得価額が1,000万円に満たない資産⑤ 支配関係発生日に含み益がある資産(資産の移転を受けた法人の適格再編の日を含む事業年度の確定申告書に一定の明細書の添付があり、かつ、一定の書類の保存があることを要件とする)
<2.損金算入制限期間>
適格再編事業年度開始の日から以下のうち最も早く到来する日までの期間(法法62条の7第1項)
① 特定適格再編事業年度開始の日以後3年を経過する日
② 支配関係発生日から5年を経過する日③ 連結納税の開始または加入に伴う資産の時価評価制度の適用を受ける場合の連結納税開始または加入直前事業年度末の日④ 非適格株式交換等に伴う資産の時価評価制度の適用を受ける場合の非適格株式交換等の事業年度末の日
<3.損金算入制限される金額>
損金不算入の対象となる特定資産譲渡等損失額とは、事業年度ごとに計算した特定資産に係る譲渡、評価替え、貸倒れ、除却等の事由による損失額から特定資産の譲渡または評価替えによる利益の額を控除した金額を言います(法法62条の7第2項、法令123の8)。
特定株主等が欠損金や含み損を有する法人(欠損等法人)を買収した上で、その法人の事業を大幅に変更する等した後に、欠損金や含み損と当該新事業の利益を相殺することは租税回避行為にあたるため、このような租税回避行為を防止するために設けられた制度です。
欠損等法人において、特定支配関係が生じた後5年以内に、以下の1から5までのいずれかに該当する場合は、該当日の属する事業年度以降において、それ以前に生じた欠損金を繰越すことができません(法法57条の2第1項)。
ここで「特定支配関係」とは、50%超の持株関係のことをいい、「欠損等法人」とは、株主との特定支配関係が生じる前に発生した青色欠損金または評価損資産を有する会社のことをいいます。
1.欠損等法人が、特定支配日の直前において事業を営んでいない場合において、特定支配日以後に事業を開始すること(法法57条の2第1項第1号)2.欠損等法人が、特定支配日の直前において営む事業のすべてを、特定支配日以後に廃止し(または廃止することが見込まれている場合)、旧事業の特定支配日の直前における事業規模のおおむね5倍を超える資金の借入または出資を受け入れること(法法57条の2第1項第2号)3.特定支配関係者等が、欠損等法人に対する債権を取得している場合において、欠損等法人が旧事業の特定支配日の直前における事業規模のおおむね5倍を超える資金借入等を行うこと(法法57条の2第1項第3号)4.上記1,2,3のいずれかに該当する場合において、欠損等法人が自己を被合併法人(消滅会社)とする適格合併を行い、または欠損等法人の残余財産が確定すること(法法57条の2第1項第4号)5.欠損等法人が特定支配関係を有することとなつたことに基因して、欠損等法人の特定支配日の直前の役員のすべてが退任し、かつ、特定支配日の直前において欠損等法人の業務に従事する使用人(旧使用人)の総数のおおむね20%以上に相当する数の者が欠損等法人の使用人でなくなり、旧使用人が従事しない事業の事業規模が、旧事業の特定支配日の直前における事業規模のおおむね5倍を超えること(法法57条の2第1項第5号) 法法57条の2の規定は、組織再編税制より優位にあるため、欠損等法人を買収した後に組織再編成を行う場合には、この規定を確認する必要があります。