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【組織再編Q&A】Q27~Q33

トランザクションサービスチーム

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Q27 取得の会計処理において取得企業の決定はどのように行いますか?
A27

企業結合が取得と判定された場合には、いずれかの結合当事企業を取得企業として決定しなければなりません。取得企業の決定方法は以下のように行います(企業結合会計基準18項から22項)。

1.連結会計基準の考え方により取得企業を決定します。
連結会計基準に従って、他の結合当事企業を支配することとなる結合当事企業が明確である場合には、原則として、当該結合当事企業が取得企業となります。
ただし、単に株式交換によって親子関係が形成される場合には、結合企業が被取得企業となるような、いわゆる逆取得となることもあります。

2.連結会計基準の考え方によってどの結合当事企業が取得企業となるかが明確ではない場合には、以下の(1)~(4)の要素を考慮して取得企業を決定します。
(1)主な対価の種類が現金等の場合
取得企業は、通常、現金を引き渡す企業(結合企業)

(2)主な対価の種類が結合企業の株式の場合
取得企業は、通常、当該株式を交付する企業(結合企業)
ただし、この場合には、逆取得に該当することもあるため、以下のような要素(①~⑤)を総合的に勘案して決定します。
① 総体としての株主が占める相対的な議決権比率の大きさ  結合後企業の議決権比率のうち最も大きい割合を占めている総体としての株主がいた結合当事企業が、通常、取得企業となります。② 最も大きな議決権比率を有する株主の存在  結合後企業の最も大きな割合を有する株主又は株主グループのいた結合当事企業が、通常、取得企業となります。③ 取締役等を選解任できる株主の存在  結合後企業の取締役会その他これに準ずる機関(重要な経営事項の意思決定機関)の構成員の過半数を選任又は解任できる株主又は株主グループのいた結合当事企業が、通常、取得企業となります。④ 取締役会等の構成  結合当事企業の役員若しくは従業員である者又はこれらであった者が、結合後企業の取締役会その他これに準ずる機関(重要な経営事項の意思決定機関)を事実上支配する場合の当該役員又は従業員のいた結合当事企業が、通常取得企業となります。⑤ 株式の交換条件
  企業結合前における株式の時価を超えるプレミアムを支払った結合当事企業が、通常、取得企業となります。

(3)結合当事企業の相対的な規模
相対的な規模(例えば、総資産額、売上高あるいは純利益)が著しく大きい結合当事企業が、通常、取得企業となります。

(4)その企業結合を最初に提案した企業
結合当事企業が3社以上である場合の取得企業の決定にあたっては、上記に加えて、いずれの企業がその企業結合を最初に提案したかについても考慮します。


@NEXT@
Q28 取得の会計処理において取得原価の算定はどのように行いますか?
A28

被取得企業又は取得した事業の取得原価は、原則として、取得の対価(支払対価)となる財の企業結合日における時価に、取得に直接要した支出額(取得の対価性のあるものに限る)を加算して算定します(企業結合会計基準23項、26項)。
支払対価が現金以外の財又は株式の交付の場合には、支払対価となる財の時価と被取得企業又は取得した事業の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定します(企業結合会計基準23項)。


@NEXT@
Q29 取得の会計処理において取得原価の配分はどのように行うのでしょうか?
A29

取得原価は、被取得企業から取得した資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点において識別可能なもの(識別可能資産及び負債)の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して企業結合日以後1年以内に配分します(企業結合会計基準28項)。
識別可能資産及び負債の範囲については、被取得企業の企業結合日前の貸借対照表において計上されていたかどうかにかかわらず、企業がそれらに対して対価を支払って取得した場合、原則として、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の下で認識されるものに限定されます(企業結合会計基準99項)。

識別可能資産及び負債への取得原価の配分額は、企業結合日における次の時価を基礎として、算定します(企業結合会計基準102 項及び103 項)。
(1) 観察可能な市場価格に基づく価額
(2) 観察可能な市場価格に基づく価額がない場合には、合理的に算定された価額
合理的に算定された価額による場合には、市場参加者が利用するであろう情報や前提等が入手可能である限り、それらに基礎を置くこととし、そのような情報等が入手できない場合には、見積りを行う企業が利用可能な独自の情報や前提等に基礎を置くものとされています。
合理的に算定された価額は、一般には、
① コスト・アプローチ
② マーケット・アプローチ
③ インカム・アプローチ
などの見積方法が考えられ、資産の特性等により、これらのアプローチを併用又は選択して算定することとなります(企業会計基準適用指針第6 号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」28 項(2))。
なお、金融商品、退職給付引当金など個々の識別可能資産及び負債については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準において示されている時価等の算定方法が利用されることとなります。


@NEXT@
Q30 逆取得となるのはどのような場合ですか?
A30

逆取得とは、一般に、企業結合の対価(株式)を交付した企業が取得企業とならない企業結合のことをいいます(企業結合会計基準20項)。

企業結合の方式ごとに見ると、以下のような場合は逆取得となります。
<合併>
逆取得となる吸収合併とは、存続会社が被取得企業となる合併(消滅会社が取得企業となる合併)のことをいいます。

<会社分割>
逆取得に該当する会社分割とは、会社分割により事業を承継する会社が被取得企、会社分割を行い承継会社の株式を受け取った企業が取得企業となる会社分割をいいます。
具体的には、分割会社(分離元企業)が承継会社の株式を受け取った結果、当該承継会社の支配を獲得する場合(子会社となる場合)が該当します。

<株式交換>
逆取得となる株式交換とは、株式交換完全親会社が被取得企業となる株式交換(株式交換完全子会社が取得企業となる株式交換)のことをいいます。


@NEXT@
Q31 段階取得の場合における被取得企業の取得原価の算定方法とは?
A31

取得が複数の取引により達成された場合(以下「段階取得」という。)における被取得
企業の取得原価は、個別財務諸表と連結財務諸表の場合それぞれに応じて以下のように算定します(企業結合会計基準25項)。
(1)個別財務諸表上の取得原価の算定
個別財務諸表上、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額をもって、被取得企業の取得原価とします。
例えば、取得企業(吸収合併存続会社)の株式が交付され、取得企業が吸収合併直前に被取得企業の株式を保有していた場合の取得の対価は、取得企業が交付する取得企業の株式の時価と合併期日の被取得企業の株式の帳簿価額を合算して算定されることになります。

(2)連結財務諸表上の取得原価の算定
連結財務諸表上、支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価をもって、被取得企業の取得原価を算定します。
なお、当該被取得企業の取得原価と、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額(持分法適用関連会社と企業結合した場合には、持分法による評価額)との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理します。
例えば、取得企業(吸収合併存続会社)の株式が交付され、取得企業が吸収合併直前に被取得企業の株式を保有していた場合の取得の対価は、取得企業が交付する取得企業の株式の時価と吸収合併直前の被取得企業の株式の時価を合算して算定され、吸収合併直前の被取得企業の株式の帳簿価額と合併期日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理されることになります。また、これに見合う金額は、個別財務諸表において計上されたのれん(又は負ののれん)の修正として処理されることになります。


@NEXT@
Q32 取得に要した支出額はどのように会計処理を行いますか?
A32

取得とされた企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等は取得原価に含め、それ以外の支出額は発生時の事業年度の費用として処理します(企業結合会計基準26 項)。
これは、取得はあくまで等価交換取引であるとの考え方を重視し、取得企業が等価交換の判断要素として考慮した支出額に限って取得原価に含めることとしたことによります。

それでは、取得原価に含める支出額とはどのようなものでしょうか?
取得原価に含める支出額に該当するかどうかは、次の(1)及び(2)を満たすかどうかで判断します。
(1) 企業結合に直接要した支出額
企業結合を成立させるために取得企業が外部のアドバイザー(例えば投資銀行のコンサルタント、弁護士、公認会計士、不動産鑑定士等の専門家)に支払った交渉や株式の交換比率の算定のための企業価値算定に係る特定の報酬・手数料等が含まれます。
社内の人件費(例えば社内のプロジェクト・チームの人員に係る人件費)等は、これに含まれません。

(2) 取得の対価性が認められるもの
現実に契約に至った企業結合に関連する支出額のことをいいます。したがって、契約に至らなかった取引や単なる調査に関連する支出額は、企業結合に直接要した費用であっても取得原価に含めることはできません。
なお、企業結合に直接要した支出額であっても、被取得企業が支出した額については、取得企業の支出ではないため、それらを取得原価に含めることはできません。


@NEXT@
Q33 条件付取得対価の会計処理方法はどのようなものでしょうか?
A33

条件付取得対価とは、企業結合契約において定められるものであって、企業結合契約締結後の将来の特定の事象又は取引の結果に依存して、企業結合日後に追加的に交付又は引き渡される取得対価をいいます(企業結合会計基準注2)。

条件付取得対価については、(1) 将来の業績に依存する条件付取得対価と(2) 特定の株式又は社債の市場価格に依存する条件付取得対価、の2つに分類されており、それぞれ以下のように会計処理を行います。

(1) 将来の業績に依存する条件付取得対価
条件付取得対価が、「被取得企業又は取得した事業の企業結合契約締結後の特定事業年度における業績の水準に応じて、取得企業が対価を追加で交付する条項がある場合等」(企業結合会計基準 (注3))、企業結合契約合意後の将来の業績に依存する場合には、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれん又は負ののれんを追加的に認識します(企業結合会計基準第27 項(1))。
追加的に認識するのれん又は負ののれんは、企業結合日時点で認識されたものと仮定して計算し、追加認識する事業年度以前に対応する償却額及び減損損失額は損益として処理します(企業結合会計基準 (注4))。
なお、条件付取得対価は、企業結合日後に追加的に交付又は引渡されるものに限定されるものと解されています。

(2) 特定の株式又は社債の市場価格に依存する条件付取得対価
特定の株式又は社債の特定の日又は期間の市場価格に応じて当初合意した価額に維持するために、取得企業が追加で株式又は社債を交付する条項がある場合等(企業結合会計基準 (注5))、条件付取得対価が特定の株式又は社債の市場価格に依存する場合には、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、次の処理を行います。
① 追加で交付可能となった条件付取得対価を、その時点の時価に基づき認識する。② 企業結合日現在で交付している株式又は社債をその時点の時価に修正し、当該修正により生じた社債プレミアムの減少額又はディスカウントの増加額を将来にわたって規則的に償却する。
特定の株式又は社債の特定の日又は期間の市場価格に応じて当初合意した価額に維持するために、取得企業が追加で株式又は社債を交付する条項がある場合とは、具体的には、取得企業が交付した特定の株式又は社債の市場価格が特定の日又は期間における特定の価格を下回っているときに、当初合意した価額を維持するために株式又は社債を追加で交付する条項があるなどの場合をいいます。