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組織再編の会計処理について定めている会計基準としては、以下の3つがあります。
① 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下、「企業結合会計基準」という。) 企業結合会計基準は、企業結合に該当する取引を対象として、他の企業を受け入れて対価を支払う側の企業(結合企業)を中心に、企業結合に係る企業(結合当事企業)の会計処理を定めています。② 企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」(以下、「事業分離等会計基準」という。) 事業分離等会計基準は、会社分割や事業譲渡などの場合における事業を分離する企業(分離元企業)の会計処理や、合併や株式交換などの企業結合における結合当事企業の株主に係る会計処理などを定めています。③ 企業会計基準適用指針第10 号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(以下、「適用指針」という。) 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準を実務に適用する場合の具体的な指針を定めたものであり、合併、株式交換・株式移転、会社分割、事業譲渡・譲受等、組織再編の形式ごとの連結財務諸表上及び個別財務諸表上の適用方法を定めています。 ある1つの組織再編は、企業結合及び事業分離、さらには関連する株主の会計処理にも関係することが多いため、2つの会計基準の適用に関する指針を一体として定めています。
会計上は、組織再編の形式にかかわらず、企業結合の会計上の分類、すなわち①取得、②共同支配企業の形成、③共通支配下の取引のいずれに該当するかによって、結合企業(吸収合併存続会社、吸収分割承継会社、新設分割設立会社、事業譲受会社など)に適用すべき会計処理が決定されます。したがって、ある企業結合が行われた場合、それがどの企業結合の会計上の分類に該当するのかを識別することが必要となります。
会計上は、分離元企業(吸収分割会社、新設分割会社、事業譲渡会社など)にとって、移転した事業に対する投資が継続しているか、それとも清算されたのかにより、適用すべき会計処理が決定されます。
<定義>
取得とは、ある企業が他の企業又は企業を構成する事業に対する支配を獲得することをいいます(企業結合会計基準第7項)。
<取得の判定>
ある企業結合が取得と判定される場合は、共同支配企業の形成及び共通支配下の取引のいずれにも該当しない場合になります(企業結合会計基準第17項)。
<定義>
共同支配企業の形成とは、複数の独立した企業が契約等に基づき共同支配企業を形成する企業結合をいいます(企業結合会計基準第11項)。
共同支配企業とは、複数の独立した企業により共同で支配される企業をいいます。また、共同支配投資企業とは、共同支配企業を共同で支配する企業をいいます(企業会計基準第12項)
<共同支配企業の形成の判定>
ある企業結合が共同支配企業の形成と判定される場合は、以下のすべての要件を満たさなければなりません(企業結合会計基準第37項)
① 共同支配投資企業となる企業が、複数の独立した企業から構成されていること② 共同支配企業となる契約等を締結していること③ 企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として議決権のある株式であること④ 支配関係を示す一定の事実が存在しないこ
<定義>
共通支配下の取引とは、結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的でない場合の企業結合をいいます(企業結合会計基準第16項)。
<共通支配下の取引の判定>
ある企業結合が親会社と子会社、同一の親会社に支配されている子会社同士など企業集団内で行われる場合には、共通支配下の取引に該当することになります。
ある企業結合が取得と判定された場合、パーチェス法による会計処理が行われます(企業結合会計基準第17項)。
パーチェス法とは、被取得企業から受け入れる資産及び負債の取得原価を、原則として、対価として交付する現金及び株式等の時価とする方法です(適用指針第29項)。
取得の会計処理は、①取得企業の決定、②取得原価の算定、③取得原価の配分 の手順で行われます。
「共同支配企業の形成」と判定された場合、(1)共同支配企業と(2)共同支配投資企業のそれぞれについて以下のような会計処理となります。
(1)共同支配企業の会計処理
共同支配投資企業から移転する資産及び負債を、移転直前に共同支配投資企業において付されていた適正な帳簿価額により計上します。
(2)共同支配投資企業(共同支配企業に事業を移転した企業)の会計処理
① 個別財務諸表上、当該共同支配投資企業が受け取った共同支配企業に対する投資の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定します。② 連結財務諸表上、共同支配投資企業は、共同支配企業に対する投資について持分法を適用します。
共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として、移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上します。
ただし、親会社と子会社が企業結合する場合において、子会社の資産及び負債の帳簿価額を連結上修正しているときは、親会社が作成する個別財務諸表においては、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額(のれんを含む。)により計上することになります。
共通支配下の取引は、親会社の立場からは企業集団内における純資産等の移転取引として内部取引と考えられるため、連結財務諸表と同様に、個別財務諸表の作成にあたっても、基本的には、企業結合の前後で当該純資産等の帳簿価額が相違することにならないよう、企業集団内における移転先の企業は移転元の適正な帳簿価額により計上することになります。
事業分離等会計基準においては、以下の場合の会計処理を定めています。
(1) 事業分離における分離元企業の会計処理(2) 資産を移転し移転先の企業の株式を受け取る場合(事業分離に該当する場合を除く。)の移転元の企業の会計処理(3) 共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の企業結合における結合当事企業の株主(被結合企業又は結合企業の株主)に係る会計処理(4) 分割型の会社分割における当該分割会社の株主に係る会計処理 分割型の会社分割とは、分離元企業(分割会社)がある事業を分離先企業(承継会社又は新設会社)に移転し、移転に係る対価である当該承継会社又は新設会社の株式を事業分離日(分割期日)に直接、分割会社の株主に交付していると考えられる吸収分割又は新設分割をいいます。(5) 株主が現金以外の財産の分配を受けた場合の株主の会計処理 これは、企業結合に該当しませんが、事業分離等会計基準において定めています。