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【代表者コラム】企業統治に関する会社法改正案

菊川 真
プライムジャパン代表 公認会計士

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かねてより法制審議会(法相の諮問機関)が検討を進めていた会社法の見直しに関する中間試案が11月25日、明らかになりました。企業統治(コーポレートガバナンス)を強化することを狙いとしていますが、構成としては大きく第1部「企業統治の在り方」と第2部「親子会社に関する規律」の2つに分かれています。


改正のポイントは以下の4点です。

① 一定規模以上の企業における社外取締役の選任義務付け*② 監査・監督委員会制度の導入③ 監査役の監査機能強化*④ 多重代表訴訟制度の導入** 現行法を見直さないとする案との両論併記


社外取締役について、原案では(A案)監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)もしくは(B案)有価証券報告書提出会社に対して、1人以上の選任を義務付けるもので、親会社の取締役・従業員や取締役の親族などは就任できないものとしています。
また取締役会に対する監督機能の充実の観点から、従来の監査役会に代わって独立性を強化した監査・監督委員会を設置できるものとしています。これは社外取締役の機能を活用するため、監査役(会)設置会社および委員会設置会社とは異なる第三の類型の機関として位置付けられており、委員の過半数は社外取締役で構成され、委員の選任は株主総会で決定し、取締役会からの独立性を確保しています。
監査役の機能強化については、監査役(監査役会)が会計監査人の選解任に関する議案および報酬等の決定権(A案)もしくは同意権(B案)を有することを盛り込んでいます。
さらに子会社に対しては、親会社の株主が子会社の取締役等に対して株主代表訴訟を起こせる「多重代表訴訟制度」を導入するものとしています。政府は年内に中間案をまとめ、来年中の法案提出を目指すとしています。
一方、民主党も独自にガバナンス強化を議論する「資本市場・企業統治改革WT」を開催し、マニフェストにも掲げていた「公開会社法」(仮称)の導入を検討しており、年明けにも規制強化の方向を示す見通しと言われています。したがって、会社法改正に係る法案の内容次第では、与党の方針が強く反映されるケースも想定され、まだ紆余曲折ありそうです。


このように政府・与党による企業統治(コーポレートガバナンス)改革に向けた見直し論議が活発になっていますが、強制的な制度の強化によって企業の自主的な経営と活力が削がれないようにしてほしいものです。わが国は1990年代以降、企業や資本市場に対する規制の強化に向けたさまざまな制度改革が行われてきました。性急な結論によって企業に義務付けを一方的に図るのみではなく、本質を冷静に見極めて、内在する真の問題点を洗い出し、社会全体でどのように役割と責任を分かち合っていくかという視点が今こそ欠かせないと考えています。