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ASBJ、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」を公表

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企業会計基準委員会(ASBJ)は、2017年3月16日、企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下、「本会計基準」という)を公表しました。


【サマリー】

  • 本会計基準は、監査保証実務委員会実務指針第63号「諸税金に関する会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」等において定められている法人税、住民税および事業税等に関する会計処理および開示について、基本的にその内容を踏襲した上で、表現の見直しや考え方の整理等を行ったものであり、実質的な内容の変更は意図していない。
  • 当事業年度の所得等に対する法人税、住民税および事業税等については、法令に従い算定した額を損益に計上する。
  • 本会計基準は公表日以後適用し、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しないものとして取扱う。


1.経緯


ASBJでは、日本公認会計士協会(JICPA)における税効果会計に関する会計上および監査上の実務指針(会計処理に関する部分)をASBJに移管すべく審議を重ねており、2015年12月には、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を公表しました。その後、ASBJでは、当該適用指針に含まれなかった部分についても審議を継続して行っており、監査保証実務委員会実務指針第63号「諸税金に関する会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」(以下、「監査保証実務指針第63号」という)についてもASBJの会計基準として開発することになっていたものです。
本会計基準は、2016年11月に公開草案を公表し、その後に寄せられた意見に基づいて、公開草案の内容を一部修正した上で、今般公表に至ったものです。



2.対象


本会計基準において移管の対象としている実務指針は、以下のとおりです。


① 監査保証実務指針第63号② 会計制度委員会「税効果会計に関するQ&A」のうち、税金の会計処理および開示に関する部分③ 実務対応報告第12号「法人事業税における外形標準課税部分の損益計算書上の表示についての実務上の取扱い」に定められた事業税(付加価値割および資本割)の開示



3.範囲


本会計基準は、連結財務諸表および個別財務諸表における次の事項を適用範囲としています(本会計基準第2項)。


  • 我が国の法令に従い納付する税金のうち法人税、住民税および事業税等に関する会計処理および開示
  • 我が国の法令に従い納付する税金のうち受取利息および受取配当金等に課される源泉所得税に関する開示
  • 我が国の法令に従い納付する税金のうち外国法人税に関する開示

※ 本会計基準は、特に明示しない限り、個別財務諸表における会計処理および開示を想定しており、連結財務諸表における会計処理および開示は、個別財務諸表における取扱いに準じて行われます。※ 実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」において、連結納税制度を適用する場合の法人税および地方法人税に係る会計処理および開示の具体的な取扱いが定められている場合、当該取扱いが適用されます(本会計基準第3項)。



4.会計処理


(1)当事業年度の所得等に対する法人税、住民税および事業税等


当事業年度の所得等に対する法人税、住民税および事業税等(※1)については、法令に従い算定した額(税務上の欠損金の繰戻しにより還付を請求する法人税額および地方法人税額を含む)を損益に計上します(本会計基準第5項)。


※1 「所得等に対する法人税、住民税および事業税等」には、所得に対する法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)のほかに、住民税(均等割)および事業税(付加価値割および資本割)を含むものとします。


(2)更生および修正申告による追徴および還付


過年度の所得等に対する法人税、住民税および事業税等について、更生および修正申告(以下、「更生等」という)により追徴または還付される場合には、以下のように会計処理します(※2)(本会計基準第6項~8項)。


追徴・還付会計処理方法
  • 更生等により追徴される可能性が高く、当該追徴税額を合理的に見積ることができる場合
  • 原則として、当該追徴税額を損益に計上する。
  • 追徴に伴う延滞税、加算税、延滞金および加算金は当該追徴税額に含めて処理する。
  • 更生等により還付されることが確実に見込まれ、当該還付税額を合理的に見積ることができる場合
  • 当該還付税額を損益に計上する。
  • 更生等により追徴税額を納付したが、当該追徴の内容を不服として法的手段を取る場合において、還付されることが確実に見込まれ、当該還付税額を合理的に見積ることができる場合
  • 当該還付税額を損益に計上する。

※2 企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第4項(8)に定める誤謬に該当するときを除く。



5.開示


本会計基準では、開示について以下のように定めています。


【当事業年度の所得等に対する法人税、住民税および事業税等】(本会計基準第9項~12項)

法人税、住民税および事業税等表示方法
  • 法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)
  • 損益計算書の税引前当期純利益(損失)の次に、法人税、住民税および事業税など、その内容を示す科目をもって表示する。
  • 事業税(付加価値割および資本割)
  • 原則として、損益計算書の販売費および一般管理費として表示する。
  • ただし、合理的な配分方法に基づき、その一部を売上原価として表示することができる。
  • 法人税、住民税および事業税等のうち、納付されていない税額
  • 貸借対照表の流動負債の区分に、未払法人税等など、その内容を示す科目をもって表示する。
  • 法人税、住民税および事業税等の税額が、中間申告により納付された税額を下回る場合等により還付されるとき
  • 当該還付税額のうち受領されていない税額は、貸借対照表の流動資産の区分に、未収還付法人税等など、その内容を示す科目をもって表示する。

【受取利息および受取配当金等に課される源泉所得税】(本会計基準第13項)

源泉所得税表示方法
  • 受取利息および受取配当金当に課される源泉所得税のうち、法人税法等に基づき税額控除の適用を受けない税額※3
  • 損益計算書の営業外費用として表示する。
  • ただし、金額の重要性が乏しい場合、法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)に含めて表示できる(第9項参照)。

※3 税額控除の適用を受ける税額については、法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)に含めて表示されることになる(本会計基準第38項参照)。


【外国法人税】(本会計基準第14項)

外国法人税表示方法
  • 外国法人税のうち法人税法等に基づき税額控除の適用を受けない税額※4
  • その内容に応じて適切な科目(売上原価・販売費および一般管理費・営業外費用・法人税、住民税及び事業税)で表示する。
  • 外国子会社(法人税法第23条の2)からの受取配当金等に課される外国源泉所得税のうち法人税法等に基づき税額控除の適用を受けない税額
  • 法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)に含めて表示する(第9項参照)。

※4 税額控除の適用を受ける税額については、法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)に含めて表示されることになる(本会計基準第39項参照)。


【更生等による追徴および還付】(本会計基準第15項~18項)

追徴・還付表示方法
  • 法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)の更生等による追徴税額および還付税額
  • 法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)を表示した科目(第9項参照)の次に、その内容を示す科目をもって表示する。
  • ただし、金額の重要性が乏しい場合、法人税、地方法人税、住民税および事業税(所得割)に含めて表示できる(第9項参照)。
  • 事業税(付加価値割および資本割)の更生等による追徴税額および還付税額
  • 原則として、損益計算書の販売費および一般管理費として表示する。
  • ただし、合理的な配分方法に基づきその一部を売上原価として表示することができる(第10項参照)。
  • 法人税、住民税および事業税等の更生等による追徴税額のうち、納付されていない税額
  • 当事業年度の所得等に対する法人税、住民税および事業税等のうち、納付されていない税額に含めて表示する(第11項参照)。
  • 法人税、住民税および事業税等の更生等による還付税額のうち、受領されていない税額
  • 当事業年度の所得等に対する法人税、住民税および事業税等の還付税額のうち、受領されていない税額に含めて表示する(第12項参照)。


6.適用時期等


本会計基準は、公表日以後適用されます。また、本会計基準の適用については、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しないものとして取扱われます(本会計基準第19項~20項)



以上





関連リンク:
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外部リンク:
ASBJ 企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」の公表