Knowledge/解説コラム

【図解M&A】第6回:M&Aと内部監査上の視点

トランザクションサービスチーム

2012/10/03

M&Aは企業自身にとってはもちろん、株主その他多くの利害関係者にとっても極めて重大な取引であり、その成否はその後の経営に多大な影響を及ぼす。すなわち、M&Aは、大きな経営リスクの一つと言える。しかし、実際には、必ずしもその当初の目的を達成しているとは言い難い事例が散見されるだけでなく、中にはその存続さえ危ぶまれるケースも見受けられる。例えば、AOLタイムワーナーやダイムラークライスラーなどの事例は有名である。
このようにM&Aが、一般には必ずしも当初の目的通りに機能せず、その効果を発揮していないことの理由の一つとして、M&Aの意思決定プロセスにおけるリスク管理の重要性を過小評価していることによるとの指摘も少なくない。
M&Aは経営トップの強い想いや意志がなければ完結しないし、また企業価値向上のために実行する以上、ビジネス優先となるのは当然であるが、だからこそ、当初の経営目標を着実に達成し、その統合効果を十分に発揮するためには、ディールの各プロセスにおいて適切な統制を整備し、運用していくことが、リスク低減の観点から必要であると考える。そして、そのような統制を構築し、定着させ、さらに継続的に改善していくための機能として、内部監査部門が果たすべき役割も大きいと考える。


ただし実際には、潜在的なリスク項目として、M&Aを内部監査の対象にしてこなかったのも事実である。しかし、M&Aが失敗した場合の経営に与えるインパクトを考慮すれば、M&Aに伴う統合リスクに対して、予防的プロセスを整備・運用していく試みは、有効かつ効果的である。
以下では、M&Aプロセスにおいて求められる統制と内部監査部門における監査上の視点、役割についてご紹介する。



1.M&Aプロセスにおける統制

M&Aプロセスにおいて求められる統制の事例は、以下の通り。
① M&Aプロセスについて、社外取締役、監査役会から適切にチェックを受ける体制が整備されている。② リスク管理のため、戦略立案時から統合手続に至るすべてのM&Aプロセスで生じる個々のリスクを事前に想定・識別し、管理する仕組みがある。③ 投資委員会または取締役会にて、基本合意時点、契約書締結時点等のマイルストーン時に適切な検証、評価手続の情報が提供され、適切な議論、調整活動の後、承認が行われている。④ 関与するメンバー(社外アドバイザー等を含む)の機密情報保持に関する適切なルールが整備・運用されている。M&Aプロセスの交渉過程では、社内外に無用な混乱を招かないための機密保持が重要である。⑤ M&Aの成果を測る基準・指標等を設定している。M&Aプロセスの品質とその結果としての統合効果をより高めるために、それらの基準・指標等に基づいて、M&Aプロセスがマイルストーン時に適切に評価され、さらに統合後においてもM&Aの成果が相当の期間に亘り投資委員会または取締役会に報告されている。