Knowledge/解説コラム

【代表者コラム】Integrated Reporting(統合報告)

菊川 真  プライムジャパン代表 公認会計士

2012/03/21

IRと言えば一般には「Investor Relations」、すなわち企業がその財務や経営の状況、業績動向等を投資家に向けて公表する活動全般のことを指しますが、もうひとつIRと言われるものがあります。国際統合報告委員会(the International Integrated Reporting Committee、以下「IIRC」)により提唱されている” Integrated Reporting“(以下、「統合報告」)です。
IIRCは、英チャールズ皇太子によるプロジェクト「The Prince’s Accounting for Sustainability Project (A4S)」により2010年8月に創設された組織です。その目的は、財務報告に環境・社会・ガバナンスに関する情報を統合し、簡潔明瞭にかつ一貫性と比較可能性を備えた様式に基づいて、国際的な情報開示のフレームワークを構築することとされています。この際のフレームワークは、企業全体のパフォーマンスに関する過去の実績と将来の見通しを包括的でわかりやすく伝え、より持続可能性に富んだ新しいグローバル経済モデルのニーズに応えることを主眼としています。
この創設の趣旨に則り、IIRCは2011年9月、統合報告(integrated reporting)に関するディスカッションペーパーを公表しています。このディスカッションペーパーは、統合報告の定義と必要とされる背景、その構成要素と基本理念等について整理し、国際的な統合報告のフレームワークの構築に向けての提案を行い、世界各国からの幅広い意見を得ることを目的としていました。


実際のところ、企業はこれまで社会的な要請のもと、さまざまな情報開示を行ってきました。財務情報を中心とした決算短信や有価証券報告書、内部統制報告書はもちろん、アニュアルレポートやCSR報告書、環境報告書等々、年々、その範囲は拡大し、その内容も多様化・高度化してきました。一方で報告書は長文となり、その開示に係る企業側の負担は増大し、関連する情報を適切に把握、整理したうえで、開示に向けた調整作業に多くの時間とコストを費やすこととなっています。また情報の利用者側では、例えばそのビジネスモデルや経営資源、組織におけるガバナンス体制、社会貢献活動等の各種情報が企業の経営戦略や目標達成の実現ならびにそのリスクや不確実性とどのような関連を持つのか、あるいはそれら情報相互の関連性と有用性等について、適切に情報を読み取ることが容易ならざるを得ない傾向も見られます。これは日本だけでなく世界共通の現象です。その意味で、企業を取り巻くあらゆる経営資源、社会資本を網羅し、環境問題にも配慮した包括的・体系的な情報開示に向けた新しいアプローチの構築は、情報の出し手・受け手双方にとってだけでなく、広く社会全般において必要かつ有意義なことと考えます。