Knowledge/解説コラム

【代表者コラム】監査報酬の動向

菊川 真  プライムジャパン代表 公認会計士

2012/02/22

日本公認会計士協会(以下「協会」)から「監査実施状況調査」の平成22年度版が公表されました。この調査は協会が毎年行っているもので、公表されたのは平成22年4月期から平成23年3月期に関わる監査概要書等に基づいて調査、集計された結果を取りまとめたものです。ちなみに監査概要書とは、監査法人等が法定監査終了後に協会に提出するもので、監査の概要とその結果(監査責任者、補助者、監査報酬、品質管理の状況、監査時間、監査意見、追記情報等)について記載したものです。
この「監査実施状況調査」には、金融商品取引法監査(連結監査および会社法監査を同時に実施している会社を含む)について売上高別、業種別の集計結果が記載されています。なお、米国監査基準適用会社の監査報酬については記載内容が統一されていないため、米国基準に基づく監査報酬を別記している場合は金商法監査のみ集計の対象とし、その他の場合は監査報酬の金額をそのまま集計に含めています。

東証時価総額と監査報酬額の推移


まず、売上高別の集計結果を見ると、対象会社数3,281社に対する監査時間数は1社平均3,785時間、監査報酬の平均は47,854千円となっています。このうち、監査時間数は前年度比0.7%増加しているのに対して、監査報酬は前年度比▲2.2%の減少となっています。監査時間数、監査報酬ともに売上規模が大きくなるにしたがい増加しますが、売上高1兆円以上の会社(143社)ではそれぞれ15,254時間、232,945千円と突出しています。なおもっとも会社数の多い売上高100億円以上500億円未満の規模の会社(1,273社)の場合、監査時間数は2,688時間、監査報酬は31,388千円となっています。
次に業種別の集計結果を見ると、やはり金融保険業が他の業種と比較して突出しており、監査時間数は1社平均5,836時間、監査報酬は95,997千円となっています。他の業種は概ね似たような水準で、監査時間数は3,000時間前後~4,000時間、監査報酬は35百万円~50万円前後です。金融機関の監査の場合、通常の監査に加えて、例えば自己査定監査の実施や多様な金融商品の評価、さらにはシステム監査も広範囲となるため、追加の監査項目が多く、監査時間数が増加する傾向にあります。また専門性も相応に求められるため、他の業種の平均報酬単価が11,000円~13,000円であるのに対して、金融保険業の場合には16,000円を超える水準にあり、監査時間数とも相まって監査報酬が突出して高くなっています。


近時は監査時間数、監査報酬ともに増加傾向にありました。平成22年度の水準を平成18年度と比較した場合、監査時間数は約57%、監査報酬は約69%増加しています。特に内部統制監査が本格化した平成20年度に大きく増加しましたが、ここ数年はむしろ落ち着きつつあります。特に平成22年度における監査報酬は、すべての売上規模の階層で前年度比下落しており、監査をめぐる環境の変化を象徴しています。ちなみに金商法監査の対象となる会社数は、平成18年度では3,699社でしたので、平成22年度までに▲11%減少(3,281社)したことになりますが、いわゆるビジネスとしての監査サービスは競争を増しており、その影響が足元の監査報酬の下落傾向に現れていると言えます。一方で同じ期間である2007年3月末から2011年3月末の株式市場の時価総額(東証一部)は約▲46%下落しており、当該期間における監査報酬と株式市場時価総額を比較すると、概ね逆のトレンドで推移していたと見ることもできます。監査制度は資本市場における情報開示の適切性と信頼性を担保し、資本市場の健全な成長に貢献することをその大きな役割としているわけですが、監査に限らず、プロフェッショナル・サービスとしてやれること、またやるべきことはまだまだ他にもあるように思います。


「監査実施状況調査」の詳細は、以下のウェブサイトに掲載されています。
日本公認会計士協会ウェブサイトへ