Topics/会計情報トピックス

ASBJ、「収益認識に関する会計基準(案)」等を公表

プライムジャパン・コンサルティング
会計情報リサーチ

2017/07/24

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2017年7月20日、企業会計基準公開草案第 61 号「収益認識に関する会計基準(案)」(以下、本会計基準案という)および企業会計基準適用指針公開草案第 61 号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下、本適用指針案という)を公表しました。


コメント募集期限は、2017年10月20日(金)までです。



I.経緯


現行の我が国の収益認識に関する会計基準に関しては、企業会計原則に「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売または役務の給付によって実現したものに限る。」(実現主義)とされているものの、包括的な会計基準はこれまで開発されていませんでした。


一方、国際会計基準審議会(IASB)および米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、2014年5 月、「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS 第15 号、FASB においてはTopic 606)を公表し、IFRS 第15 号は2018 年1 月1 日以後開始する事業年度から、Topic 606 は2017 年12 月15 日より後に開始する事業年度から適用されることとなっています。


こうした状況を踏まえ、ASBJでは、我が国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に着手し、適用上の課題等に対する意見募集に寄せられた意見を踏まえ、検討を重ねた結果、今般、本会計基準案および本適用指針案(以下、合わせて本公開草案という)の公表に至ったものです。



1.基本的な方針(本会計基準案第91 項~第94 項)


開発にあたっての基本的な方針としては、財務諸表間の比較可能性の観点から、IFRS 第15 号の基本的な原則を取り入れることを出発点としつつ、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮すべき項目がある場合には、比較可能性を損なわせない範囲で代替的な取扱いを追加することとしています。


(連結財務諸表に関する方針)① IFRS 第15 号の定めを基本的にすべて取り入れる。② 適用上の課題に対応するために、代替的な取扱いを追加的に定める場合には、国際的な比較可能性を大きく損なわせないものとする。


(個別財務諸表に関する方針)

以下を理由として、基本的には、連結財務諸表と同一の会計処理を定めることとしています。
① これまでに開発してきた会計基準では、基本的に連結財務諸表と個別財務諸表において同一の会計処理を定めてきた。② 同一の内容としない場合、連結財務諸表を作成する際の連結調整に係るコストが生じる。一方、同一の内容とする場合、連結子会社等における負担が懸念されるが、重要性等に関する代替的な取扱いを定めることにより、一定程度実務における対応が可能となる。



2.範囲(本会計基準案第3 項)


本公開草案は、次の①から⑥を除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理および開示に適用されることが提案されています。

① 企業会計基準第10 号「金融商品に関する会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引② 企業会計基準第13 号「リース取引に関する会計基準」の範囲に含まれるリース取引③ 保険法に定められた保険契約④ 顧客または潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品または製品の交換取引⑤ 金融商品の組成または取得に際して受け取る手数料⑥ 日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第15 号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」の対象となる不動産の譲渡


なお、本公開草案では、棚卸資産や固定資産等、コストの資産化等の定めがIFRS の体系とは異なるため、IFRS 第15 号における契約コスト(契約獲得の増分コストおよび契約を履行するためのコスト)の定めを範囲に含めていません(本会計基準案第102 項)。



II.会計処理(本会計基準案第13 項~第75 項、本適用指針案第4 項~第102項)


1.基本となる原則(本会計基準案第13 項~第15 項)


本公開草案では、約束した財・サービスの顧客への移転を、当該財・サービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように収益の認識を行うことを基本原則として、次の5 つのステップを適用することが提案されています。


ステップ1:顧客との契約を識別する。
ステップ2:契約における履行義務を識別する。
ステップ3:取引価格を算定する。
ステップ4:契約における履行義務に取引価格を配分する。
ステップ5:履行義務を充足した時にまたは充足するにつれて収益を認識する。



2.収益の認識基準(本会計基準案第16 項~第42 項、本適用指針案第4項~第22 項)


【ステップ1(契約の識別)】


会計基準を適用するにあたっては、次の①から⑤の要件のすべてを満たす顧客との契約を識別することが提案されています。


① 当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること。② 移転される財・サービスに関する各当事者の権利を識別できること。③ 移転される財・サービスの支払条件を識別できること。④ 契約に経済的実質があること。⑤ 顧客に移転する財・サービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと。当該対価を回収する可能性の評価にあたっては、対価の支払期限到来時における顧客が支払う意思と能力を考慮する。


【ステップ2(履行義務の識別)】


契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財・サービスを評価し、次の①または②のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別することが提案されています。


① 別個の財・サービス② 一連の別個の財・サービス


【ステップ5(履行義務の充足による収益の認識)】


収益の認識については、以下のとおり提案されています。


(1) 企業は、約束した財・サービス(以下、「資産」と記載することもある)を顧客に移転することによって、履行義務を充足した時にまたは充足するにつれて、収益を認識する。(2) 資産が移転するのは、顧客が当該資産に対する支配を獲得した時、または獲得するにつれてである。


次の3つの要件のいずれかを満たす場合、資産に対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する。


(1) 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること(2) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じるまたは資産の価値が増加し、当該資産が生じるまたは当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること(3) 次の要件のいずれも満たすこと

① 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じ、あるいはその価値が増加すること② 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること


上記3の要件のいずれも満たさず、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものではない場合には、一時点で充足される履行義務として、資産に対する支配を顧客に移転することにより当該履行義務が充足される時に、収益を認識する。



NEXT:「II.会計処理 3.収益の額の算定」