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「監査法人ガバナンス・コード」原案の公表

2016/12/22

金融庁は、2016年12月15日、「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)(案)(以下、「コード原案」という)を公表した。


会計監査を巡っては、2015年10月、今後の会計監査の在り方について幅広く検討するため、「会計監査の在り方に関する懇談会」が設置された。また本年6月に閣議決定された「日本再興戦略2016」では、会計監査の品質向上・信頼性確保のため、監査法人の組織的な運営のための原則(監査法人のガバナンス・コード)を策定し、監査法人のマネジメントの強化を図る必要性が掲げられていた。これを受け、本年7月には「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」が設置され、5回に亘る審議を経た後、今般、コード原案として取りまとめられたものである。



コード原案の概要


コード原案は、「監査法人が果たすべき役割」、「組織体制」、「業務運営」、「透明性の確保」の観点から、5つの原則と、それを適切に履行するための22の指針から構成されている。


【監査法人が果たすべき役割】


監査法人については、公認会計士法上、その公益的な役割が定められている。コード原案では、監査法人がそうした役割を組織的に果たすため、監査の品質向上に向けた業務管理体制の整備を社員(パートナー)の責務として掲げるとともに、トップがリーダーシップを発揮することの重要性を規定している。

原則1指針
監査法人は、財務情報の信頼性の確保、市場参加者等の保護など、その公益的な役割を果たすため、法人構成員による自由闊達な議論と相互啓発を促し、その能力を十分に発揮させ、会計監査の品質を組織として持続的に向上させるべきである。1-1 トップのリーダーシップ
1-2 行動指針の明確化
1-3 適切な動機付け
1-4 組織文化・風土の醸成
1-5 非監査業務の位置づけ


【組織体制】


大規模な監査法人においては、経営陣による的確なマネジメント機能の発揮が監査の品質の確保において欠かせないとした上で、実効的な経営機関の設置とその役割の明確化が求められている。具体的には、監査法人としての適正な判断が確保されるための組織体制の整備、監査上のリスクに基づいた被監査会社との意見交換のための環境整備、人材育成やITの有効活用などが項目として挙げられている。また、経営の実効性を強化する観点から、経営機能の監督・評価機関の設置および外部の第三者の活用が求められている。

原則2指針
監査法人は、会計監査の品質の持続的な向上に向けた法人全体の組織的な運営を実現するため、実効的に経営(マネジメント)機能を発揮すべきである。2-1 実効的な経営機関の設置と運営
2-2 経営機関の役割の明確化
2-3 経営機関の構成員の選任

原則3指針
監査法人は、監査法人の経営から独立した立場で経営機能の実効性を監督・評価し、それを通じて、経営の実効性の発揮を支援する機能を確保すべきである。3-1 監督・評価機関の設置
3-2 独立した第三者の選任
3-3 独立した第三者の役割の明確化
3-4 実効性確保のための環境整備


【業務運営】


「業務運営」の原則では、経営機関の考え方を監査の現場まで浸透させるための体制を整備するとともに、そうした考え方を業務に反映させるために、大局的かつ計画的な人材育成や人事管理・評価の重要性が強調されている。

原則4指針
監査法人は、組織的な運営を実効的に行うための業務体制を整備するとともに、人材の育成・確保を強化し、法人内および被監査会社等との意見交換や議論を積極的に行うべきである。4-1 情報共有と伝達のための体制整備
4-2 人材育成・人事評価に係る方針策定
4-3 人材の適正配分
4-4 被監査会社とのコミュニケーション
4-5 内部・外部からの通報制度の整備


【透明性の確保】


会計監査の品質向上には、その考え方や取組みを適切に評価して監査法人を選択し、それが品質向上に向けたインセンティブの強化や監査報酬の向上につながるといった好循環を生むことが重要であること示されている。そうした観点から、コードの適用状況や品質向上に向けた取組みに関する情報開示を充実させるため、例えば「透明性報告書」の作成を通じた市場参加者への説明が提言されている。

原則5指針
監査法人は、本原則の適用状況などについて、資本市場の参加者等が適切に評価できるよう、十分な透明性を確保すべきである。また、組織的な運営の改善に向け、法人の取組みに対する内外の評価を活用すべきである。5-1 本原則の取組に関する開示の充実
5-2 開示すべき項目
5-3 外部との意見交換
5-4 適用状況の評価
5-5 改善に向けた評価結果の活用


適用対象


コード原案は、「大手上場企業等の監査を担い、多くの構成員から成る大手監査法人」を念頭に策定されているが、それ以外の監査法人において自発的に適用されることも妨げるものではないとされている。したがって、各監査法人が、本原則をいかに実践し、実効的な組織運営を実現するかについては、それぞれの特性等を踏まえた自律的な対応が求められるとされており、その適用については、コンプライ・オア・エクスプレインの手法によることが想定されている。



意見募集


意見募集の期限は、2017年1月31日までである。なお、この意見募集は、法令等に係る場合とは異なり、有識者検討会での審議に活用する観点から行うものであるとされている。


以上






関連リンク:
政府、情報開示・会計基準・会計監査の質の向上を推進 ~日本再興戦略2016を閣議決定~
不正会計問題と監査制度
金融庁、「会計監査の在り方に関する懇談会」提言を公表


外部リンク:
金融庁「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」(第5回)
金融庁「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)(案)の公表