Knowledge/解説コラム

【代表者コラム】IFRS第16号「リース」の概要と実務対応

菊川 真  プライムジャパン代表 公認会計士

2016/03/28

1. はじめに


IFRS
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国際会計基準審議会(IASB)は、2016年1月13日、リース会計に関する新基準IFRS第16号「リース」(以下、「新リース会計基準」という)を公表しました。新リース会計基準の策定は、IASBと米国財務会計基準審議会(FASB)の共同プロジェクトとして2006年に開始され、2010年と2013年の2度にわたる公開草案を経て最終基準化に至ったものです。共同プロジェクトでは、借手の会計処理を最重要テーマに掲げて審議されてきましたが、基準化により借手はすべてのリース取引を原則オンバランスすることになります。このため、新リース会計基準は、特に借手の会計処理に大きな影響を及ぼすことになります。一方、貸手の会計処理については実質的な変更点はなく、現行のIAS第17号と同様の会計処理を踏襲しています。以下、本稿では特に断りのない限り、借手の会計処理について解説しています。

新リース会計基準は、2019年1月1日以後開始する事業年度から適用されます。早期適用については、収益認識との関連性が強いことなどから、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」と併せて適用する場合に限り認められています。なお、新リース会計基準の公布により、現行のIAS第17号「リース」、IFRIC解釈指針第4号「契約にリースが含まれているか否かの判断」、SIC解釈指針第15号「オペレーティング・リース‐インセンティブ」およびSIC解釈指針第27号「リースの法形式を伴う取引の実質の評価」は廃止されます。


リースプロジェクトの経緯

リースプロジェクトの経緯



2. リースプロジェクトの目的


現行のIAS第17号は、リースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに区分し(2分類モデル)、ファイナンス・リースはオンバランス処理する一方、オペレーティング・リースについてはオフバランス処理することになります。この点について以下のような問題点が、かねてより指摘されていました。リースプロジェクトでは2分類モデルに起因するこれらの問題点を改善し、財務情報の透明性を図ることを最大の目的としていました。


  • 類似するリース取引であっても、その分類結果によって、全く異なる会計処理となり、企業間の比較可能性が損なわれているとの指摘がなされていること
  • ファイナンス・リースに該当しないようにリース契約を設計することにより、オンバランスを回避している取引実態があること
  • アナリストによる分析では、リース取引について企業の財務データをオンバランス調整する実務があるが、過大に調整がなされる傾向があり、かえって財務情報を歪めるおそれがあること

問題点の改善



Why has the IASB developed a new Leases Standard?



“現行のIAS第17号は、企業の経済的実態を適切に反映していない”
“3兆ドルのリース取引の多くが、オペレーティング・リースとしてオフバランスされている”



【リース債務に関する情報開示不足】

清算の至った小売業では、破綻した後に巨額のリース債務が表面化する事例が見られた。

会社名①リース債務
(オフバランス・割引前)
②貸借対照表上の債務倍率(①/②)
Circuit City(US)4,537百万米ドル50百万米ドル90.7倍
Borders(US)2,796百万米ドル379百万米ドル7.4倍
Woolworths(UK)2,432百万ポンド147百万ポンド16.5倍
HMV(UK)1,016百万ポンド115百万ポンド8.8倍
Clinton Cards(UK)652百万ポンド58百万ポンド11.2倍

出典:”Current status of IASB re-deliberations” (EFRAG Board meeting, January 2015)に基づき作成


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