Knowledge/解説コラム

【代表者コラム】IFRSを巡る国内動向と展望 No.1 ~2015年上半期、任意適用は88社~

菊川 真  プライムジャパン代表 公認会計士

2015/09/01

はじめに


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2013年6月、自民党の提言において、IFRS任意適用を2016年末までに300社程度にするとの方針が打ち出されて以降、我が国におけるIFRS任意適用は着実な増加を見せている。これは、要件緩和等のIFRS推進策の実施や導入事例の積み上げなど、官民一体となった取組みによる賜物と言える。しかし一方で、日本の会計基準とIFRSとの間では、会計に対する基本的な考え方の相違等もあり、任意適用の一層の拡大、さらには強制適用に向けては、なお課題も少なくない。
そこで本シリーズでは、IFRS対応に関する我が国のこれまでの流れを振り返りつつ、足元の適用状況やIFRS移行に伴う財務諸表への影響を分析するとともに、今後の課題と展望について考察を試みたい。
まず第1回の本号では、我が国のIFRS対応の変遷と任意適用の足元の状況について分析した結果をご紹介する。分析にあたっては、特に断りのない限り、開示されている財務情報に基づいて実施している。
なお、文中の意見に関する部分は、筆者の個人的見解であることを申し添えておく。



1.IFRS対応の変遷


我が国のIFRS対応は、その時々の国内外の情勢に影響を受けながら変遷してきた。
2005年1月、EU域内の上場企業に対するIFRS強制適用が開始された後、我が国(企業会計基準委員会(ASBJ))とIASBは 「東京合意」を締結し( 2007年8月)、日本基準とIFRSとのコンバージェンス作業が進められてきた。
その間、EUその他の国々におけるIFRS適用の拡大、米国におけるIFRS採用の動き※1などを背景に、国内においてもIFRS強制適用に向けた機運が高まっていった(①②)。
しかし、リーマンショック等の世界的な金融危機や東日本大震災の発生、米国のIFRS導入姿勢の後退、さらには国内産業界からの強制適用への懸念の声を受けたことなどを背景として、2011年の金融担当大臣の声明によって強制適用は、事実上、先送りされた(③④)。


※1 米国SECは、2007年から上場外国企業に対して、調整表なしでIFRS適用を認めた。また2008年11月にロードマップ案を公表し、米国内上場企業に対して2009年から任意適用および2014年から企業規模に応じて段階的にIFRS強制適用をすることが示された。しかし、その後の情勢変化等を受けて、当該案は見送りされており、2012年7月のSEC「最終スタッフ報告」では、IFRS適用の具体的な方向性・時期は示されていない。

IFRS対応の変遷


このように、いったん後退した流れは、2012年12月、安倍政権が誕生してから、再度、導入促進に向けて舵を切るようになる。
2013年6月、自民党はその提言の中で、IFRS財団モニタリング・ボードのメンバー要件である「IFRSの顕著な適用」を実現するために、2016年末までに300社程度の企業がIFRSを適用する状態になるよう明確な中期目標を立てることを明記し、これを受ける形で、企業会計審議会からは「当面の方針」が示された。
「当面の方針」では、強制適用の是非については、未だ判断すべき状況にないとした上で、まずは任意適用の積み上げを図ることが重要であるとして、任意適用要件の緩和をはじめとする施策が打ち出されてきた(⑤~⑩)。

IFRS対応の変遷




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