Knowledge/解説コラム

【代表者コラム】2014年IPO市場の動向

菊川 真  プライムジャパン代表 公認会計士

2015/02/10

1. はじめに


IPO
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2014年の株式市場は382円安の波乱の幕開けとなった。取引初日の相場下落は、リーマンショックのあった2008年以来、6年ぶりのことである。
前年の2013年の活況は記憶に新しい。世界的な金融緩和による株式市場への資金流入、円安効果、アベノミクスに基づいた政策への期待感から、日経平均株価の年間上昇率は50%を超え、過去30年で最大を記録した。対して2014年は、前年の反動や円安の一服感、消費税増税による景気後退懸念などを背景に、前半は不安定な動きが続いた。しかし5月後半からは一転して上昇基調に転じ、6月には「日本再興戦略」改訂版が公表され、法人税を20%台まで引き下げることを目指す政府方針が明記されるなど、成長戦略の実効性を一段と高めるための方策が打ち出された。9月後半にかけて高値圏で推移した後、いったん大きく調整する局面はあったものの、日銀追加金融緩和、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用割合の引上げなどを背景に、年末にかけて再び上昇ピッチを早め、12月8日には日経平均株価が約7年ぶりに18,000円を超え、年初来最高値を更新した。このような相場環境の中、2014年の国内の新規上場会社数は80社と前年を上回った。以下、本レポートでは、2014年におけるIPO市場を振返りながら、その動向を整理してみたい。なお、文中の意見に関する部分は筆者の私見である



2. 2014年のIPO市場の動向


(1)新規上場会社数は5年連続の増加
ここ最近の新規上場会社数の推移を見ると、リーマンショックのあった2008年を境に低迷し、2009年には19社まで落ち込んだ。これはピーク時(2000年の203社)の10分の1以下の水準である。しかし、その後は徐々に回復基調に転じ、2013年の新規上場会社数は58社まで回復、リーマンショック前の水準にようやく戻った。さらに2014年は、当初年間70社前後の新規上場が予想されていたが、期待以上の結果となり、ここ数年の好調な流れを維持した格好だ。これで5年連続の増加である(図表1参照)。新規上場会社数の推移(単位:社)

この間、政権交代はあったものの、いずれの内閣においても日本経済の持続的な成長には、成長企業へのリスクマネーの供給と新興市場の活性化が不可欠であるとの認識に変わりはなく、成長戦略の柱の一つとして、新規上場促進に向けた制度改正や環境整備が行われてきた。最近のIPO市場の回復は、財政・金融政策に基づいたマクロ経済要因だけでなく、こうした一連の上場制度の見直しによる基準緩和や負担の軽減策が功を奏していると評価できる。


(2)業種別では情報・通信業が最多
業種別では情報・通信業が24社と全体の3割を占めた。昨年トップだったサービス業が18社、次いで小売業が10社で、これら上位3業種で全体の6割超を占めている(図表2参照)。2012年および2013年も、これら上位3業種の割合は6割超と同様の傾向が続いている。図表2. 業種別内訳

情報・通信業、サービス業には個性的な企業や独自技術を持つ企業が数多く見られる。「面白法人」のブランド化を進める(株)カヤック、「パーソナライズ」を切り口としたマーケティング支援事業のサイジニア(株)、音声と映像に専門特化したミドルウェアを開発する(株)CRI・ミドルウェア、アドテクノロジー分野においてRTB(リアルタイム入札)技術を使ったプラットフォームを提供する(株)フリークアウトなどはその一例である。



(3)初値の動き
2014年の初値と公募価格の倍率は、全体平均で1.9倍となった。市場別で見た場合、マザーズ市場は平均2.4倍と2013年(2.5倍)とほぼ同水準、JASDAQ市場は1.7倍と2013年(2.7倍)を下回った。2013年はアベノミクスへの期待感とそれに基づく株式市場の活況とがあいまって、初値が公募価格を下回った銘柄はわずか1社に留まったが、2014年は全体の2割近い15社が公募価格を下回る展開となった。2014年はマーケットが停滞する局面も少なからずあったが、個々の案件に対する投資家の選別の目も厳しくなったと考えられる。
初値/公募価格倍率のトップ10は、すべてマザーズ銘柄である(図表3参照)。上位2社の初値は公募価格の5倍を超えている。市場全体では2倍を超える銘柄が29社(うち26社がマザーズ市場)あった。このうち例えば、マザーズに上場したCYBERDYNE(株)は、赤字でのIPOであったが、初値は公募価格の2.3倍、時価総額も400億円を超える水準に達した。このように成長期待の高い企業への投資家の評価は、足元の業績やマーケットの動向にかかわらず依然として高いと言える。

図表 3. 初値/公募価格倍率